遅れが多い中央総武線で運転手を襲う「中電病」の体調不良とオーバーラン

JR東日本の中央総武線は中央線の三鷹駅と総武線の千葉駅の区間を結ぶ各駅停車の列車です。旧国電区間は路線によって電車の色が塗り分けられていますが、中央総武線は黄色になっています。そんな中央総武線は電車の運行時間の遅れが多いことも有名なのですが、その他に「中電病」(「中野統括センター南乗務ユニット」(旧中野電車区)からこう呼ばれているようです)と呼ばれる謎の症状が運転手を襲うことも記事になっていました。

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2023年11月までの3年間で乗務中断は43件

日本テレビの報道によると、中野統括センター南乗務ユニットで2023年11月までの3年間で乗務員が乗務中断に至ったのは43件、2024年度だけで19件にも及んでいます。

中電病の症状

この「中電」というのは中野統括センター中野南常務ユニットの略称です。この中電に属する運転手にナゾの体調不良が相次いで中電病と呼ばれています。具体的な症状として挙げられていることは下記の通りです。

  • 意識が朦朧とした
  • 睡魔に襲われ、居眠りしてしまった
  • 記憶が曖昧
  • 速度の感覚が鈍くなった

この症状を訴える社員を見た別の社員は、「魂が抜けた人形のようだった。目の焦点が合っていなかった」と話しています。また、日本テレビの取材に答えたJR東日本の社員は「家に帰って、寝て起きたら、当時の記憶が断片でしかなかった。同様の体調不良で、オーバーランを2回してしまった。血液検査・MRI・脳波の検査をしたが、異常はなかった。持病や、服用している薬はない」と回答しています。

この体調不良に伴って、電車のオーバーランが多発しています。

JR東日本の対策

JR東日本では運転士が飲む物の水質検査、空気成分測定や健康診断などを実施したほか、ベッドやロッカーの交換、壁紙の張替えなどをしていますが原因はいまだ不明です。神主さんを呼んで安全祈願も行っています。

JRの組合では『2019年に乗務員の勤務制度が改正されて、乗務距離や拘束時間が増えた。2020年には職場転換制度により運転士が多く転出して、超過勤務や休日出勤も多くなった』、『このままでは重大事故につながりかねない』と指摘しています。本件は衆議院でも質疑が行われていますが、国土交通省からは、

  • お尋ねについては、現時点では、御指摘のように「乗務時間や拘束時間が増えた」、「超過勤務や休日勤務が多くなった」及び「労働環境が厳しくなった」との情報は得ておらず、お尋ねの「調査」を行う予定はない。

と回答しています。(衆議院議員鈴木庸介君提出JR中央・総武線乗務員の原因不明の体調不良に関する質問に対する答弁書

過去には大久保駅‐東中野駅間で3件の重大事故も発生

実は1964年から1988年にかけて、大久保駅と東中野駅の間では3件もの重大事故が発生しています。

1回目の事故(1964年1月14日)

  • 東中野駅から大久保方へ400mほどの地点で、赤信号のため停車していた中野行きの各駅停車に後続の各駅停車が追突
  • 事故を起こした運転士は当日正午より出勤であったのものを、人員不足を理由に出勤前日に当日午前7時の出勤に変更されたことから、十分な休養がとれていなかった
  • 当時は、自動列車停止装置(ATS)は工事中でまだ設置されていなかった

2回目の事故(1980年10月17日)

  • 東中野駅から大久保方へ340mほどの地点で、赤信号で停車していた中野行き各駅停車に後続の各駅停車が追突
  • 事故を起こした運転手の見込み運転による信号無視が原因とされた
  • ATSは設置されていたものの、第1閉塞信号機に対するATS地上子にて警報を受け確認扱いを実施

3回目の事故(1988年12月5日)

  • 東中野駅に停車していた中野行き各駅停車に後続の各駅停車が追突
  • 列車の遅れを回復させるために後続列車運転手が停止信号に従わず進行し先の電車に気づくのが遅れて追突
  • ATS-B型は停止信号の約600m手前から警報が作動、東中野駅137m手前に設置されていた直下警報コイルでも警報が作動するが確認扱いをして進行

ハインリッヒの法則から考えると、すでに乗務中断が43件なので、いつ重大事故が発生してもおかしなくない状況です。また、中央総武線は列車が遅延することが多いことも、とても乗務員や乗客に負担をかけていると思います。これだけ遅延が多いと、現在でも運転手さんは遅延を少しでも回復しようと無理することが多いのではないでしょうか。

大事故が発生する前に、JR東日本には中電病の原因究明と再発防止策の実施を徹底してほしいです。