EPSONのPC9801互換機「PC-286US」の購入とレビュー

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1.購入に至る経緯

 会社でパソコンを使用する機会が多くなるにつれ、家に仕事を持って帰ってやるときに、パソコンを家にも設置する必要が生じていました。このときはOSとしてはMS-DOS、ソフトウエアは一太郎のバージョン3やマルチプラン、エディタといえばMIFESが全盛の時代でした。一太郎はMS-DOSのシステムフロッピーの中にATOKと一太郎本体が両方とも入ってしまうというサイズでしたが、それなりに使い勝手が良かったことを覚えています。

 ハードウエアとしては会社では主に、PC9801VMやPC9801VXが活躍していた頃です。PC9801VXは80286CPUを使用していて、VMと比べるとキビキビと動作してくれて、とても気に入っていました。当然、NECのこれらの機種は人気もあって非常に高く、一式をそろえると平気で数十万円は飛んでいってしまうという代物でした。家で会社と同じデータが使えないといけないので、PC9801互換である必要があります。必然的に購入の検討対象はEPSON製品ということになりました。秋葉原に行っていろいろとお店を回って安い製品を探していると、幸いに駅前のラジオ会館の上のほうに店を構えていたサトー無線の店の中で、20万円弱のPC-286US-H20とシングルスキャンモニタがセットになった商品を見つけることが出来ました。

 エプソンの製品は型番にCPUのモデル名そのものを入れてくれていたので、機種を選択するときに判りやすかった利点があります。どうしても、日本電気のPC9801シリーズだと、VXだと80286、RAだと80386などといった具合にパソコンのモデル名とCPUの型番がまったく関連性の無いネーミングだったので、性能の違いが判りにくかったりするところは残念でした。

 今でこそ、EPSON(エプソン)というと、プリンターのイメージが非常に高いですが、当時はプリンタ事業よりも、NEC PC9801互換機の製造・販売の方に力を入れていたのはないでしょうか。

2.スペック

 本機のスペックは以下の通りです。この当時のNECの機種は80286CPUとV30のCPUが2つのっており、スイッチで切り替えられるようになっていました。V30にあわせて作られたゲームソフト等が80286では早く動きすぎて、プレイが行いにくくなるためです。本機はCPUこそ80286の1台ですが、フロントスイッチで10MHzと6MHzに切り替えて使うことが出来るようになっています。

エプソンPC-286US機能仕様書
CPU80286(i80286相当品)クロック10MHzノーウェイト
(フロントスイッチにより6MHzに切り替え可能)


ROMBIOS、その他96Kバイト
RAMユーザーズメモリ640Kバイト
最大ユーザーズメモリ容量6.6Mバイトまで本体内実装可
(内部拡張スロット:4Mバイト、および外部拡張スロット:2Mバイト)
VRAMテキスト用VRAM 12Kバイト
グラフィック用VRAM 256Kバイト







テキスト表示80文字×25行、80文字×20行
40文字×25行、40文字×20行
カラー8色(キャラクタ単位に指定可)
グラフィック表示
(カラー)
640×200ドット 4画面
640×400ドット 2画面
4096色中16色(アナログRGBディスプレイ使用時)
      8色(デジタルRGBディスプレイ使用時)
グラフィック表示
(モノクロ)
640×200ドット 16画面
640×400ドット 8画面
漢字表示JIS第1水準漢字2965字、JIS第2水準漢字3388字
JIS非漢字524字、その他813字、ユーザー定義文字188字



キーボード
(スカルプチャータイプ)
JIS標準配置準拠
テンキー、コントロールキー、10ファンクションキー
その他キャピタルロック可
セパレートタイプ(本体とカールケーブルにより接続)





フロッピーディスク1M/640Kバイト両用タイプの3.5インチフロッピーディスク
2ドライブ内蔵
ハードディスクSTD:20Mバイト3.5インチ固定ディスクユニットまたは40Mバイト3.5インチ固定ディスクユニットを1基内蔵可能
H20:20Mバイト3.5インチ固定ディスクユニットを1基内蔵






マウスインタフェース内蔵、PCマウス(PC286MS)および相当品使用可能
プリンタインタフェース8ビットパラレルインタフェース(セントロニクス社仕様に準拠、14ピン)
シリアルインタフェース1ch内蔵、RS-232C規格に準拠
サウンドサウンドFM音源3和音 SSG音源3和音
スピーカ内蔵 LINE OUT端子付
カレンダ機能Nicd電池によるバックアップ
内部拡張スロット2スロット
外部拡張スロット2スロット(PC-9801Vシリーズ用ボード使用可)
電 源AC100V±10%、50/60Hz
温湿度条件10~35℃、20~80%(但し結露しないこと)
外形寸法本体 390(W)×356(D)×88(H)mm
キーボード:435(W)×180(D)×36(H)mm
重 量本体 STD:8.1kg H20:9.4kg
キーボード:1.4kg
消費電力STD:35W(最大90W) H20:50W(最大90W)
本体添付品キーボード、アース線セット、マニュアル(ハンドブック及びユーザーズマニュアル)、保証書、VALUE UP購入申込み書、保守サービスのご案内、愛用者カード、日本語Disk BASIC(V.2.0)、ソフトウェア・インストレーション・プログラム

1.HDD

 当時としてはとてもうれしかったのが、20MBのハードディスクが付いていたことです。今でこそ、ゴミのようなサイズのHDDですが、当時は20MBもあれば、MS-DOのシステムはもちろんのこと、一太郎等のソフトウエアも数本を入れることが出来ました。このときは一太郎でさえ、フロッピーディスクから起動して使えた時代でした。このパソコンにCyrix社のCPUアクセラレータを付けるなどしてずっと80386の時代は使い続け、80486の時代になってやっとCOMPAQのデスクトップパソコンを購入し本機は第一線から退きました。しかし、PC9801アーキテクチャーは残しておかないとデータが使用できなくなるので、今でもこのパソコンは押入の中に残してあります。

2.FDD    (2003.1.4追記)

 FDDは3.5インチのタイプのものがついています。当時は5インチが主流だったので3.5インチは普及するか否か判らなかったのですが、今となっては逆に5インチのFDDを見かけること自体がなくなってしまいました。このFDDは問題をかかえていて、1年程度塚っているとFDを入れたときに「FDが入りました」ということを検出するスイッチが接触不良になって、FDを挿入したことを検出できなくなってしまうのです。最初は接点復活材を吹きかけることでよみがえっていましたが、そのうち接点復活材でも復活ができなくなってしまったことを覚えています。

3.隠し技

 このパソコンの後継機種はPC286UXというマシンで、クロック周波数が80286の12MHzになっています。実はこのパソコンも筐体をあけて中のディップスイッチをいじると、12MHzにクロックアップが出来てしまう仕様になっています。はっきりいって2割アップ程度では体感速度の違いはほとんど無かったと記憶していますが、後継機種と同じスペックになったというそれなりの満足感はありました。このマシンは初めて買ったマシンですが、同時に初めてクロックアップを行った機種にもなりました。

4.EPSONのその後

 当初、EPSONはPC286シリーズ、PC386シリーズを始めとした、NECのPC9801シリーズの互換品を販売して、それなりのシェアを確保していたかと思います。NECからは、自社が発売するMS-DOSのプログラムに、ある特定のメモリ領域に「NEC」の文字列が無いと起動できないようにするというガードを付けて、EPSON機ではOSが走らないようにするといった対処を行っている時期がありました。対するEPSONも、このチェックロジックを無効化するためのパッチプログラムを配布するという対抗手段をとっていました。当時は98シリーズに日本語をハード的に表示する機能が付いていたため、AT互換機ではなく、98シリーズがデファクトスタンダードになっていましたが、ハードウエアの性能が上がり、IBMがDOS/Vというソフトで日本語を表示する仕組みを発表したこと、およびWINDOWSが普及して、WINDOWS-APIに準拠しているAPであれば、AT互換機でも98シリーズでも問題なくアプリケーションが動くようになったことで、値段が高かった98シリーズは売れなくなり、COMPAQを始めとした低価格攻勢路線にEPSONともども撤退せざるを得なくなっていきました。その後、EPSONは鮮やかにAT互換機への転身を図り、特にエプソンダイレクトによる消費者への直接な低価格販売が話題になりました。

5.EPSONの旧型PC

 EPSONではPC9801互換のパソコンは既に製造を中止してしまっていますので、もし手に入れたい場合は中古の商品を探すことになります。チェーン店を展開している、HARD OFFに行くと、ジャンクコーナに置いてあるのを目にします。通販では、下記のお店で扱っていることがあるようです。(商品が無くなったためリンクを削除しました)

 中古パソコンは商品により当たりはずれが激しいので、通販で購入するのは少し勇気がいりますが、私は過去に2回ほど、中古パソコンをネットで購入したことがあります。どちらとも、会社のリースバック品らしく、傷などは多少付いていて、ノートパソコンなど持ち歩くものでは少々厳しいかもしれませんが、家において使う分にはそれほど悪いものではありませんでした。

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