今日の新聞の朝刊は各誌とも1面でウイルスバスターの件を報じていました。朝日新聞を見てみると、「トレンドマイクロ社は24日未明、テストをしないファイルを配布していたことを明らかにした」と書かれています。
今回の事象から見ればパソコンの機種を選ばずにCPUが100%になる事象が発生していることから、テストが行われずに配布されたことに間違えはありません。トレンドマイクロ社は「必要なテストが一部抜けていた」と弁明しているようですが、そんなに甘い話しではないでしょう。レアケースで発生するような事象であればそのような弁明も通用するでしょうが、今回は大部分のパソコンが使用不能に陥っていますから「重要な試験を実施しなかった」といった方が適切だと思います。
具体的な発言では「テストはしていたはず。しかしこのような事態になったからには、それが不十分だったのかもしれない」と無責任な発言をして、記者からの質問に答えられずに、一回記者会見を中断、その後、「個別のコードについてのテストはしたものの、パターン・ファイル全体のテストを怠った」と報告、その後の記者からの「商品としてユーザーに配信する最終形のパターン・ファイルをテストしなかったのか」と質問を受けてまた記者会見は中断して、「どのテストをしなかったかははっきりしない」と回答したと言います。
何のテストをしたか証跡が社内に残っていないということでしょうか?これが事実であれば、どんな管理体制で試験をしているのか非常に疑問になります。
通常は商用ソフトの出荷前には試験項目表を作成して、この試験項目を実際に消化して、それを品質管理責任者が承認をして商品の出荷が認められるという順番で作業が行われます。この試験項目表と実際の試験結果が残っていれば、どの試験が実施されて、どの試験が実施されなかったが全て明らかになります。
このテストの工程に関して、何も証跡が残っていないとも思わせるような回答です。個人任せで試験を実施させて、その試験結果は何も記録に残さず、第三者による承認行為も行われずに商品が出荷されたということを意味します。これは最悪の推測にすぎませんが、海外で作成されたパターンファイルを日本国内ではなんら試験を実施せずにそのまま公開したのかもしれません。
日経新聞によれば、ウイルスバスターの利用者は個人で350万人、法人で350万台、新しいパターンファイルを取り込んだパソコンは全部で17万台。(どうやって数えたのでしょう??)、そして問い合わせは全部で7万件に及んだようです。これが月曜日に発生していたらもっと悲惨なことになっていたでしょう。
トレンドマイクロ社は記者会見で「11時前には修正方法をホームページに掲載した」と対応の迅速さに胸をはって答えていたようですが、「今回のトラブルでホームページを見られない被害者はどうすればよいのか?」という問いに担当者は困惑した様子だったといいます。また、この記者会見自体も午後6時からはじめて、深夜1時30分すぎまで、断続的に続いたという報道もありました。
昨日と比べると、トレンドマイクロの公式サイトにおける今回の一連の問題に対する掲示は丁重な雰囲気にはなりました。
やっと事態の深刻さが判って来たということでしょうか。
また、10時過ぎにはTOPページにアクセスすると下記のような謝罪文がまず現れてからTOPページに移動するようになりました。(何しろ昨日までは「xxによりコンピュータのCPUが100%になる現象に関して」という題名で表示されていたのですから・・・)
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コンピュータの動作が著しく遅くなる、或いはコンピュータを使用できなくなる等の事象が発生しております。
対象製品や発生条件についても公開させて頂いておりますので、
こちらをご覧下さい。
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トレンドマイクロ社は記者会見での受け答えやサイトでの掲示内容も含めて、調子が悪い方向に向かっていると思います。まずは、今回のトラブルの修復を全力で進める一方で、今回の事故に至った社内の事実関係を確認した後、隠さずに正しいことを公表して、そして再発防止策をきちんと発表することが信頼回復に向けての第一ステップだと思います。
コメント
トレンドマイクロの「ウイルスバスター」に不具合 全国のシステムに障害
■トレンドマイクロの執行役員 日本代表 大三川彰彦氏
トレンドマイクロ社「ウイルスバスター」の
4月23日のウイルスパターンファイルに不具合があり
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