箱根登山鉄道というのは都内から1時間30分足らずの近郊にありながら、とても珍しい鉄道です。建設にあたっては当初はアプト式鉄道を導入しようという案もありましたが、メンテナンスコストが上がってしまうため、路線計画を見直して勾配をできるだけ緩やかにすることで粘着式の鉄道で運転する案に見直されました。この見直しにあたってはスイスのベルニナ鉄道が参考にされています。勾配を緩やかにしたとは言っても最大の勾配は、80 ‰(1000メートル進むと80メートル上がる)の箇所があり、これは鉄道事業法の適用を受けている日本の粘着式鉄道の中で最も厳しい勾配になっています。(アプト式の大井川鐡道井川線には90‰の勾配があります)
小田原から箱根湯本まではそもそもは箱根登山鉄道の路線ですが、小田急のロマンスカーや急行電車がひっきりなしに乗り入れていて、昼間はどちらかというと小田急線の一部のような感じすらします。
小田急はJRの在来線と同じ線路幅の狭軌(1067mm)、箱根登山鉄道は安定性を重視して新幹線と同じ標準軌(1435mm)とおのおのの線路幅が違うので、小田原から箱根湯本までは3本のレールがひかれています。
箱根湯本から先は急勾配、そして急カーブが連続します。急勾配の途中にはスイッチバックという仕組みが取り入れられていて、進行方向がめまぐるしく変わります。
車であれば、とても半径が小さいカーブを連続させて「いろは坂」みたいなこともできますが、鉄道では道路ほどの急カーブを曲がることができないので、いったり来たりしながら高低差を克服していく仕組みです。
JRではほかにループ線という仕組みでグルグルと回りながら高低差を克服する仕組みもありますが、残念ながら箱根登山鉄道ではループ線は無いようです。
そんなスイッチバックの中の一つで写真をとってみました。右側に見える電車は坂を上ってきた形です。この駅で折り返して目の前の分岐器で左側の線路に転換して更に坂を上っていきます。一方でこちらの電車は目の前の分岐器で右側の線路に入って坂を下っていく形になります。
【2020/07/21追記】
2019年10月の台風19号で大きな被害を受けて、箱根湯本と強羅の間で運休を続けていた箱根登山鉄道が、半年以上の復旧作業を経て、7月23日から全線で運転が再開することが決まりました。
あわせて記念乗車券も一枚410円で発売されます。
小田急旅行センターの小田原と箱根湯本で23日から26日まで、二枚セットを各300セット販売します。
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