エプソンが再生インクの販売に乗り出すようです。今まではインクカートリッジに様々な細工をして、他社が再生インクを販売したりインクの詰め替えが行われにくいような仕組みを取り入れてきた同社にとっては大きな方向変換なのではないかと思います。エプソンからの公式なニュースリリースは下記のページにあります。
★ セイコーエプソン、純正再生インクカートリッジを開発(2007年2月15日) | ニュースリリース | トピックス | エプソン
なぜ、エプソンは自社で再生インクの発売という方向転換を行ったのでしょう。一つは昨年にエコリカ社が販売するリサイクルインクカートリッジの販売に関して、販売差し止めを求めた裁判で、エプソンの請求が棄却されてエプソンが実質敗訴したことにともなう影響があるのではないかと思います。敗訴を報じる報道については下記のページにあります。
★ リサイクル品訴訟でエプソンが敗訴 : ネット&デジタル : YOMIURI PCから : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
従来はエプソンでは各販売店などにインクカートリッジの回収ボックスを設置していましたが、このポストに入れられた使用済みカートリッジは分解して原料に戻して再生素材にしていたそうです。
エプソンは環境への配慮としてインクカートリッジの回収を実施していましたが、再生インク会社に使用済みのカートリッジが回らないようにするための施策であったことも確かでしょう。今回の発表により、再生素材にするのではなく、このカートリッジそのものをそのままで再生する形になります。
気になる価格ですが、ITmedia NEWSによれば「純正品と同じくらい」になるとエプソンの販売経営企画部では発言していることが掲載されています。環境には優しいとはいえ、「純正品と同じくらい」では売れないのではないでしょうか。私はこの価格であるのであれば、サードパーティのリサイクルインクカートリッジを購入します。
【2020/09/12追記】
消耗品(インク)で儲けるビジネスモデルからの脱却
以前はエプソンのプリンタはいわゆるジレットモデルと呼ばれる消耗品で儲けるビジネスモデルが採用されていました。ジレットは髭剃りの替え刃が高めの価格設定で収入を維持できるモデルとしていましたが、エプソンのプリンタではインクを高めの設定にして収入を維持する仕組みになっていました。本体のプリンターは比較的安価でしたが、全色揃ったインクを買うとそれなりの値段がして数回の買い替えで本体が買えてしまうほどの価格設定になっていました。
しかし、インドネシアではインクの中に直接チューブでインクを補充する業者が現れたり、日本を始め各国でも互換インクを発売する業者が現れたりと、ジレットモデルに限界が見え始めました。そんな中で、2年間はインクの交換をしなくて済む、大容量インクタンクをエプソンでは開発して、2016年からエコタンクシリーズを発売しました。
このシリーズは特にインクの消費量が多い利用者がお得になることから、そのような層に向けて販売を強化します。
ビジネスモデルを変えるのは大変なことですが、エプソンの取り組みは一つの参考例になりそうです。
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