国立天文台の三鷹キャンパスで平成20年10月25日に実施された特別公開に関するレポートの続きです。
開発実験棟・高度環境試験棟に行った後には、解析研究棟というところに行ってきました。ここでは、ハワイにある「すばる望遠鏡」の観測施設との間でテレビ会議システムを使った生中継を実施していました。
この「すばる望遠鏡」はハワイ島マウナケア山の山頂、標高で言うと4200メートルもの高さに設置されています。富士山の山頂の高さよりもまだ1000メートルくらい高いところにあるのですから驚きます。山頂の気圧は平地の2/3しかありません。
ほかの場所と比較すると、地上の天候に左右されにくい高さにあるので快晴の日が多いのだそうです。だいたい年間の3/4程度の日は観測することが出来るといいますので、確かに天体観測に適した場所なのでしょう。
しかし気象的にはかなり厳しいところであるところことには間違えがなく、たまたまこの中継を実施しているときにハワイの施設に行っていた助手の学生さんは空気が薄いところで高山病にかかってしまうことを防ぐために、ポータブル型の酸素ボンベで酸素を吸入していました。この装置を使うだけでかなり身体への負担は軽減されるそうです。
今回はハワイのマウナケア山の山頂との間で映像を交換する形で実施されました。音声に遅延がなかったので、衛星通信を使っているわけではなく、地上の回線網を使って通信をしているようです。インターネット網を使っているのでしょう。ずいぶん便利な世の中になったものです。
今回は所長の林さんという方がハワイ側で施設の紹介をしてくれました。この方、爆笑問題のニッポンの教養という番組にも出演された有名な方のようです。
こちら(爆笑問題のニッポンの教養 | 過去放送記録 | FILE045:「128億光年の宇宙見物」 | 林正彦(はやしまさひこ) | 2008年8月26日放送分)に番組の情報がありました。
非常に話もわかりやすくて、私のような初心者でも楽しくお話を伺うことができました。
林さんは国立天文台ハワイ観測所所長ということですが、実はずっとこの標高4000メートルの山の上にいるわけではなく、必要なときだけ、この施設に足を運ぶ程度なのだそうです。そして、普段は山麓にある標高200メートルほどの場所にある施設内で暮らされていると解説されていました。山頂の施設で望遠鏡を運用しているときには、運転するための人が最低でも2人、配置されるそうです。これは、片方の方が気分を悪くするようなことがあっても、もう片方の方が運用を継続させることが出来るようにするための配慮だそうです。
そして、実際に観測する人も、必ずしもこの山頂の施設にまで足を運ぶ必要はなく、山麓の施設でリモートで観測することもできるようになっているのだそうです。
望遠鏡そのもの特徴は、このクラスの望遠鏡にしては広角であるため、未知の天体を見つける能力が非常に優れていると解説されていました。その証拠として、現在までに論文発表などでわかっている最も遠い銀河ランキングで、このすばる望遠鏡で発見した未発表の7個の銀河をあてはめて検証すると、上位10個のうち、第五位を除いて9個までが、日本人の手ですばる望遠鏡を用いて見つけた銀河なのだそうです。
三鷹キャンパスに来ているお客さんと林所長の間でテレビ会議システムを使用した質疑応答もありました。興味深かったのは、このすばる望遠鏡の利用申し込みに関してです。どんな用途で使用するかをきちんとまとめて申し込み、うまく審査を通過すれば、このすばる望遠鏡を使用することが出来るのだそうです。しかも、使用料金は全くの無料、そして、日本からハワイに行くための交通費までもが無料になるのだそうです。
コメント