東洋経済を読んでいると、「スパコン1位奪還も見えない投資回収策」という記事がありました。この記事を読んでいると、何と構築費は2009年度時点で約1120億円を見込んでいたそうです。
また、運用費は年額80億円、そのうち電力代は22億円から29億円といいますので、とてもこの節電が呼びかけられている中では、スイッチをONにすることは出来ないのではないかと思います。
事業仕分けで、「なぜ2位ではいけないのですか」という指摘がとても有名になりましたが、確かにこれだけの予算をかけてスーパーコンピュータの開発競争を繰り返すことに意味があるのか否か非常に理解しにくいと思います。しかも、せっかく1位をとったとしても、他の国ではこれを超える能力を持つスーパーコンピューターの開発がすでに進められています。ある期間、1位をとることを目標に1120億円の予算をつぎ込んで開発をするのは、いったいどんな効果が見込まれるのか非常に気になるところです。
スーパーコンピューター「京」を安く作ることができた?
今回のスーパーコンピューターは国内大手メーカーの技術が用いられているようですが、中にはもっとオープン化された技術を使えば、もっと安く構築できるという意見もあるそうです。
☆『スーパーコンピューターを20万円で創る』 | 集英社新書
1120億円の予算をつぎ込んで作ったのであれば、理化学研究所は、その投資額よりも大きい効果が出ていることを積極的にアピールすべきだと思います。
理化学研究所による「京」の紹介
こちらに理化学研究所のスーパーコンピューターに関する紹介ページがあります。
ここを読んでも、単位時間あたりの演算回数が世界最速を記録したという紹介以外、いったい、何の効果が出ているのか、判りませんでした。非常に残念なことだと思います。
【2024年10月10日追記】
その後の「京」の全体波及効果に関するレポート
文部科学省が”特別調査レポート スーパーコンピュータ「京」の全体波及効果に関する分析調査”をハイペリオン・リサーチ社の見解として公開しています。(【参考資料5-7】「京」の波及効果調査(Hyperion社)報告書 (mext.go.jp))
要約は下記の通りです。
- 「京」は 5,000 億円の収益と 7,000 億円以上の利益/コスト削減を実現しており、合計 1 兆2,000 億円以上の経済的波及効果を「京」の利用者にもたらしました。
- 本調査において特定された経済的波及効果の合計は、「京」に要した総費用の約9倍となっています。
- 諸外国と比較してみると、HPC(「京」)に投資した 1 円あたり平均 1,623 円の収益があり、さらに HPC への投資 1 円あたり平均 60 円の利益もしくはコスト削減を達成しており、経済的な投資収益率(ROI)は他に類を見ないものです。
- 主要国の HPC への投資 1 円当たりの経済的 ROI の結果は次の通りです。日本 1,623 円、EU 289 円、米国 373 円、中国 9 円。
- 主要国の HPC への投資 1 円当たりの利益・コスト削減額は以下の通りです。日本 60 円、米国 39 円、EU 48 円、中国 3 円。
- また、「京」の経済的なリターンを伴わない科学的イノベーションの波及効果では、世界の他の主要なコンピュータからも目立っています:
- 今回評価した「京」を利用した 111 件のプロジェクトのうち、54 件(49%)が科学的重要度の一番高いカテゴリーにランクされています。
- 評価した 111 件のプロジェクトのうち 71 件(64%)が、世界中の 50 以上の組織に有用な科学的影響力の高いカテゴリーにランク付けされています。
これだけの成果があったことを正式に公表することは、今後の日本における科学技術への投資を推進するためにも良かったと思います。
コメント