書評を見た中で面白そうに感じたので、小倉昌男氏の経営学という本を読んでみました。小倉昌男氏はヤマト運輸の1971年からは社長としての立場で会社を取り仕切っていました。特にクロネコヤマトの宅急便事業を生み出して軌道にのせた人でもあります。
冒頭から驚きのストーリー
この本の冒頭は突然、大和運輸が創業時からたいへんにお世話になって来た、三越との取引をヤマト運輸側から契約解除した話しから始まりました。
しかも、当時の三越の社長である岡田氏を名指しで批判しているような内容で、これにはとても驚きました。なぜここまでのことが書けたのかが分からなかったので、ネットで情報を追加して調べてみると、当時、三越事件とまで言われる大きな出来事があったようです。納入業者に対して、商品や映画の前売り券を強制的に売りつけたり、協賛金や社員派遣を要請したことなどが明るみに出て、独占禁止法で審決を受けたそうです。ヤマト運輸は1979年に絶縁をしたとWikipediaで書かれていました。
2010年に三越と和解
その後のヤマト運輸と三越の関係がどうなっているのかを調べてみました。すると、2010年の3月に和解をして、2010年4月から運送業務を再開したようです。
三越と伊勢丹は2008年に経営統合したのですが、この流れで2010年4月からは伊勢丹の業務システムに一本化される計画になっていたようです。伊勢丹ではもともと取り引きがあったヤマト運輸の配送システムに三越ものるような形になったようです。
また、過去の成功体験にとらわれてしまって、近距離の貨物輸送に集中しすぎて、長距離の輸送になかなか着手しなかったため、他社よりも5年、進出が遅れてしまったのは、非常に痛手が大きかったという話しもありました。ビジョナリーカンパニーには、サウスウエスト航空を例にして、何に取り組んで何はやらないないかをリストアップし、これを長年にわたって極力守ることを推奨しています。
しかし、運輸業の長距離輸送については方針を改めた方が良かったとされています。運輸業の場合は道路の整備やトラックの高性能化に伴い、瞬く間に鉄道よりもトラックで運んだ方がメリットのある地域が広がっていった例になりますが、どのタイミングで方針を変更するのか、その見極めが最も大事だということになるのでしょう。
サービス向上が先、利益はあと
後半は、「サービスの向上が先。利益はあと」という哲学が語られています。サービスの向上によりあとから利益が付いてくると本当に確信が持てないと、なかなか投資を先行するのは難しいと思います。そういう意味でこの著者は論理的に考え抜いてこれならば行けるという確信を持っていたのだと思います。
結局、とても面白い本だったので足かけ2日間で完読してしまいました。
【2022/04/13追記】
プロジェクトX挑戦者たち 「腕と度胸のトラック便 ~翌日宅配・物流革命が始まった~」
NHKでプロジェクトXの再放送がありました。タイトルは「腕と度胸のトラック便」です。何か、貨物輸送をしている会社の話かな?と思い見始めたのですが、ヤマト運輸の話でした。
どちらかと言うと、小倉昌男さんの視点から描いたと言うよりは、北海道の営業所の職員の視点で描いた部分が多く、「経営学」とはかなり趣が違うストーリーになっていました。
最初の宅配荷物を預かるまでの苦労、郵便局の店先で営業したような話しまであります。また、翌日配達が基本なのに、雪が多くて家が見つからず、翌日の配達を断念した話し、岩見沢などの営業圏外から荷物を取りに来て欲しいと連絡があっても免許がないので取りに行くことができない話し、産地直送で人気が出た話し、免許がなかなか下りずに地元業者などとの討論会が行われた話しなどがストーリーになっていました。
番組の中では本物の小倉昌男さんも何回か出演されていて、経営学を読んでこのドキュメンタリーを見るとまた面白いのではないかと思います。
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