クリスアンダーソンのMAKERSという書籍を読んでみました。この本は会社に講演に来た人が引用していて、気になっていた本です。
内容は今までとまったく違った変化が製造業に押し寄せてくるだろうという、すぐ近くに迫って来た大きな変化を予測しています。
昔であれば、何か試作品を一つ作るためにも、設計の腕の良い人を見つけたり、それに協力してくれる工場を見つけたり、金型を作ったりしなければならず、大きなコストが必要でした。金型なんかを作った日には、数個の試作品を作っただけで終わりにしてしまっては、大きな損出だけが残ってしまいます。
また、たとえ試作品ができて、市場に投入しようと思っても、その広告手段をどうするか、店舗をどうするか、市場の反応をどう集めれば良いかなど、いくつでも課題が挙げられます。
しかし、現在はインターネットが普及したこと、3Dで製品を作ることができる3Dプリンタが現れて来たことにより、大きく環境が変わりました。3Dプリンタでは色々な部品を組み合わせたような最終製品を一気に作ることができるわけではないですが、少なくとも以前であれば金型を作らなければいけなかったような部品を電子図面から作ることができてしまいます。
2Dプリンタ搭乗時の産業界の構造変化
2Dのプリンタ(普通のプリンタ)では、今から20年ほど前までは、ドットインパクトプリンタが主流で値段が高く、粒度が荒かったので、とても写真の代替になるとは思えませんでした。ところが、その後はインクジェットプリンタが登場し、一気に画質が良くなって行きました。今では、年賀状の印刷など、印刷所へ発注するような機会はほとんどなくなってしまいました。
3Dプリンタと産業界の構造変化
これと同様な産業界の構造変化が3Dプリンタでもあるのではないかということは確かに想像できます。
ネットである分野の設計で腕の良い人を見つけることもできますし、デジタルデータの設計図面から3Dプリンタで試作品を作ることもできます。また、製品を売ろうと思えばネット上でお店を開いて売ることができます。すべてが以前と比較して小コストでできる地盤が整いつつあります。
依然として、マスを重視して大量生産に軸足をおくような従来の発想で仕事を続けていたら、イノベーションのジレンマで革命的イノベーションにいつ駆逐されてしまうかわかりません。
以前、小倉昌男の経営学という本を読みました。この方はクロネコヤマトの宅急便を開発した人です。それまでのヤマト運輸は個人向けの宅配便などはまったく扱っておらず、例えば三越のお歳暮品の配達や都市間の貨物便などで経営していました。しかし、小倉昌男はこのままでは大きな伸びは期待できないと一念発起して宅配便を立ち上げ大成功しました。当時は周囲の人からはそんなの儲からないからやめておけと忠告をたくさん受けていましたが、自分なりの観察から絶対にビジネスになるという読みがありました。これが、運送業の一つの産業革命となりました。
これと同様に製造業においても大きな変化の波はすぐそばまで来ているという実感をこの本を読む中で持つことができました。
今後押し寄せてくるであろう新しい波に向けて、どんな準備を実施しておくのかが、将来の事業運営に大きな影響を与えるのだと思います。
【2013年7月25日 追記】
10万円を切る3Dプリンタが発売
とうとう、10万円を切る3Dプリンタが発売されて話題になっています。これから普及するのに従って、さらに性能の高い商品が、安く提供されるようになっていくでしょう。
そうなれば、従来のプリンタが普及したときと同様に、社会の仕組みが大きく変わる部分が出てくるはずです。その変化はチャンスにもつながりますので、未来をよく想像して行動することが、これからの社会でも重要になりそうです。
コメント