地図のゼンリンが9月中間期の業績を2億円の赤字に修正

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地図の販売で有名な会社、ゼンリンが9月中間期の業績予想(2億円の黒字)を下方修正して純損益が2億円の赤字になる見込みだと発表しました。中間期に準損益が赤字になるのは9年ぶりとなります。

前年度の中間期決算は、売上高が前年同期比13.7%増の258億円、経常利益は4.5倍の27億円、純利益は4.8倍の11億円を超えるという非常に順調な決算でした。それからわずか1年でこのように厳しい決算をむかえるというのは、地図という業界の大きな変革期を迎えていることをうかがわせます。

今回、赤字に転落した大きな理由はカーナビ用に提供する地図データの売り上げ減少が響いているためとされています。なぜ、カーナビ用に提供する地図データの売り上げが響いたのかについて、朝日新聞では低燃費で維持費が安い軽自動車に人気が集まったことでカーナビも低価格製品に人気が集中、提供する地図データの利用料も安くなりカーナビをつけない車両も増えているということを理由にあげていました。

ただ、根底には地図そのものの価値に対する消費者の認識変化が大きいのではないかと思います。一番大きいのは、色々なポータルサイトで地図を無料で公開するようになったことで、地図は無料で見られるものという認識が消費者に植え付けられてきたことです。住宅地図のような無料で入手することができないような情報であれば価値があると思うのですが、カーナビで実装されている地図は各ポータルサイトで提供されている地図とあまり変わりません。この地図に大きな金額を払うことはやはり難しいと思います。

また、スマホをカーナビとして使う人も増えています。スマホ向けにはナビ機能がついたアプリまでもが無料で提供されています。また、有料のカーナビアプリですら数千円で購入出来るので、そのうち地図に支払われている費用は微々たるものなのではないかと想定できます。

カーナビ自体の価格も以前であれば新車を購入時に20万円以上する2DINタイプのカーナビを購入するのがスタンダードでしたが、今や2〜3万円のポータブルナビでも十分な精度で案内をしてくれます。私が購入した旧サンヨーのカーナビも7インチ画面で価格は4万円ほどでしたが、数年間は内蔵地図が無料で最新版に更新できるサービスまで付属していました。地図会社に行く費用は本当に減ったのではないかと思います。

消費者の目から見たとき、20万円以上するようなカーナビは明らかに高いとしか見えないので、今後は2DINタイプのカーナビも廉価になっていくものと思います。

従って、カーナビ向けに地図を提供する事業についても、これから大きな伸びを期待することは難しいのではないかと思います。ゼンリンとしては国内のこのような状況も鑑みグローバル化を進めています。今後、海外での売り上げをどこまで上げられるか、長期的には地図というコアコンピタンスを軸に多角化が図れるかいなかが今後の鍵になるのではないでしょうか。

ゼンリンとしても、中間期の発表時点では、今年度通期の業績予想についてそのまま据え置いて精査をするという発表にとどまっていることから見ると、厳しい状況を認識しているのかもしれません。

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