よく夏休みなどの高速道路が混むシーズンになると、渋滞がテレビで話題になります。そして、大きな渋滞が発生したときには、高速道路をそのまま突き進んだ方が良いのか?、それとも一般道を併用して進んだ方が良いのかといったことが特集で組まれたりもします。(渋滞家族)
西成教授の渋滞学
さらには、渋滞時には走行車線をずっと走った方が良いのか、それとも追い越し車線を走った方が良いのかといったことも話題になります。こんな議論の時に、よくテレビで取り上げられるのが渋滞学の権威の西成教授です。現在は、東京大学先端科学技術センターの教授をされています。専門は非線形動力学、渋滞学とWikipediaでは紹介されていました。
この本は2006年に初版が出版されて話題になりました。前々から読みたい本の一つだったのですが、ようやく読むことができました。
出だしの説明からとてもわかりやすいです。ホースから水が出ている時にホースの先を指でつまんで断面積を1/2にすると2倍の勢いで水が出てきます。ホースの中で渋滞は発生しにくい状態です。
しかし、道路ではそうはいきません。2車線道路のうち1車線が工事で塞がれていると、残りの1車線でクルマの流れは倍になりません。むしろ、工事現場直では合流しなくてはいけないのでスピードは普通に比べて遅くなります。従って、工事現場の横を一定時間に通過できるクルマの数は通常時の半分以下になってしまい、これが渋滞を巻き起こす原因になります。
こんな形で説明が続いて行き、高速道路で渋滞はなぜ発生するのかといったメカニズムがわかります。例えば、調査の結果では、1車線で渋滞なくクルマが走ることができる臨界密度は1Kmあたり25台なのだそうです。これを超えると、渋滞が発生します。この1Kmあたり25台のときの車間距離は40mということで、どのクルマも車間距離40mを守って運転すれば、渋滞は発生しにくくなります。
ただ総延長10Kmの高速道路を想定すると、律儀に全部のクルマが1Kmあたり25台になるように走っていたとすると、その高速道路には常時250台のクルマしかいないことになるので、入口のインターチェンジからはいることができないクルマが出てくるのでしょう。
渋滞にはまってしまったときに、イライラとしながら時間を過ごすのか、渋滞そのものを科学してみるのかで、随分、時間の有効性が変わってくるのかもしれません。
【2024/07/31追記】
NHKあさイチでの渋滞特集
お盆シーズン到来に伴い、NHKのあさイチで「渋滞のときに一番早く進む車線」が特集されました。こちらも西成教授の研究成果が活用されています。
この番組でも、「車線は変更せずに左車線を走行する」のが正解とされていました。3車線でそれぞれの車線を走行したときの平均速度も実際に測定されていて、
- 右車線(追い越し車線) 16.3Km/h
- 中央車線(追い越し車線) 20.6Km/h
- 左車線(走行車線) 25.6Km/h
右車線と左車線では時速10Km/hも違うという結果でした。渋滞が10Km以上続き、かつ3車線ある道路では左側の走行車線走行による効果が高いということです。
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