今まで、東京電力などは、原子力発電は火力発電など他の発電システムよりはコストが安いことを売りにしていたと思います。原子力発電が停止している現在、電気料金が値上がりしたのも、火力発電などの発電コストが高いためという理由だったと思います。これを信用していたのですが、立命館大学や大阪市立大学の教授などの試算で実は原子力発電のコストは火力発電のコストを上回るという結果が出たというニュースをNHKが報じていました。
今回の試算では、来年、原子力発電所が運転を再開し運転開始から40年が経過したところで廃止することを想定して、東京電力福島第一原子力発電所の事故対策費用を踏まえて算出されました。この結果、3年前に政府が計算した液化天然ガスや石炭による火力発電の1キロワットアワーあたりのコストを上回ることが分かりました。
このとき用いた福島第一原子力発電所の事故対策費用は東京電力や国が公表した資料を分析し、除染、中間貯蔵施設整備、廃炉、住民などへの賠償で11兆円が投じられたことを前提としています。これらの金額を総じて計算した1キロワットアワーあたりのコストは11.4円となりました。一方で、液化天然ガスや石炭による火力発電のコストは政府の委員会の試算で10円前後としています。
すでに発生してしまった東日本大震災に伴う福島原子力発電所の自己費用を含めて計算することが適切か否かは意見が別れることになりますが、原子力発電所を運転する以上、40年間の間、絶対に事故が無いと保証できない上、もしも、事故が起きると大きな影響が出る原子力発電所については、これくらい悲観的に計算したほうが現実的だという気持ちもします。
今回の原子力発電のコスト試算結果は再稼働反対につながる数値ではありますが、石炭や液化天然ガスを燃やした場合には二酸化炭素の発生に伴う地球温暖化という問題を抱えています。本当は燃料電池など、第三のクリーンエネルギーが実用化してくれれば良いのですが、大規模な発電ができるようになるまでには、まだまだ時間が必要でしょう。
もしも、原発再稼働の議論をすすめる上では今回の発展コストの試算結果を念頭に置き、原発の再稼働に向けては色々な意見があります。特に再開して本当に問題がないかの審査と、もしも、事故が発生した場合に備えた予防対策、事後対策の十分性を厳正に審査した上で判断を進めて欲しいところです。
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