2015年1月10日に放送されたNHKスペシャルでシリーズ日本新生「ニッポン“空き家列島”の衝撃」という番組が放送されました。日本では人口減少時代に入りましたが、地方だけではなく首都圏でも空き家が問題になってきています。全国の空き家は統計数字に表れているだけでも現在820万戸にもなってしまいました。これが20年後には3軒に1軒が空き家になるという試算もあります。
また、空き家は放火などの標的になる恐れや崩壊すれば近隣住民や通行人に被害が及ぶ可能性があります。さらには空き家が増えれば地価の下落も招いてしまい、近隣で住む人たちの生活に大きな影響を与えてしまいます。日本では今まで土地など不動産の価格は上がるという神話がありましたので、「家と土地さえあれば安心」という気持ちが根強く残っています。しかし、人口が減少してしまえば空き家が増えるのは必然であり、ごく一部の地域を除いてはこれから土地の価格が上昇に転じるのは非常に難しいことなのではないかと思います。
一方で、なぜ人が住まなくなったときに、家を取り壊さないのかというと、家を取り壊した途端に固定資産税が6倍になってしまうという課題があるそうです。これは土地の価格がどんどん上がってしまったときに住人の負担を軽くするため、家が建っていれば固定資産税を軽減するという法律を施行したことに伴いこのような状況になっています。
また、団塊の世代の人は若い頃には都心に近いところに住んで、やがて郊外に一戸建てを持つというのが標準的なスタイルでした。ところが、今の若い人は郊外で家族と一緒に住んだあと、結婚したあとに都心に近いところに引っ越すという形が増えているそうです。団塊の世代の人は奥さんは専業主婦で旦那は都心まで長距離通勤をするというパターンが一般的でしたが、今の若い世代は共働きの人が増えました。共働きで子どもを育てるためには、どうしても会社までの距離が近くなくてはいけません。共働きが増えたのは価値観の多様化や一人あたりの給与が減ってきているため共働きをせざるをえない場合もあります。
また、これだけ空き家が増えているのに、新築住宅はどんどん造られています。これは景気刺激策などで住宅建築を奨励しているためです。また、各市区町村でも自分の街に住む人を増やすために新たに大規模な宅地開発を繰り返したりして、数少なくなってきた住人の取り合いを繰り広げています。大規模な宅地開発をすれば、また水道や下水、電気、通信などのインフラを新たに作らなければいけませんが、これらは新たに作ると維持費もそれだけ増えてしまい市区町村の財政を長期的に圧迫します。
番組としてはこれに立ち向かうための政策として「コンパクト化」を奨励していました。富山市ではすでに、このコンパクト化を進めて居住推奨地区を設けてこの地区に住む人を増やすようにしているそうです。これは確かに理にかなっていて、インフラもその地区だけを維持すればよくなるので、市区町村としての運営コストも低減することができ、また空き家も減らすことができます。
これからもしも家を購入する場合には、コンパクト化されても居住推奨地区になるような場所に住むようにしていくのが良いのでしょう。ただ、中古物件に限って言えば、すでに100万円台で買えるマンションもあるそうです。
☆100万円台でマンションが買える?すさまじい不動産相場崩壊、住宅はただの粗大ゴミに | ビジネスジャーナル
もしも通勤にも困らないのであれば、このような物件で割り切る案もあるのかもしれないとこの記事を読んで思いました。
また、企業は通勤手当の支給をやめるべきだという意見もありました。
通勤手当分を給料に上乗せすれば、社員はもっと会社に近いところに住もうというインセンティブにつながるという内容です。これも確かに「コンパクト化」には役立つ考え方なのかもしれません。ただ、介護など何らかの理由で会社から離れている場所に住まざるを得ない社員もいるはずで、何らかの配慮が必要なのだと思います。
今後も空き家問題はさらに社会問題として大きくクローズアップされていくと思います。空き地であればまだ良いと思うのですが、建物を残し続けるのは非常に不安です。今のまま取り壊すことができないような税制のままでは問題が解決しないので、税制面でも何らかの対策が行われると思います。調べてみると自民党から空き家の適正管理に関する法律が提出される予定だそうです。法案では老朽化した空き家に対する住宅用地の特例の不適用、そして老朽化した空き家を自主的に解体した場合は別の特例を設定し税額を抑えるというものです。この法案が通ることにより空き家がへることに期待したいところです。
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