日本時間の7月18日に日本企業による英国企業の大きな買収案件の報道が流れました。ソフトバックグループが英国、ケンブリッジに本社を置くARM Holdingsの発行済みおよび発行予定株式の全てを現金で買い付けることを発表したのです。買収総額はなんと日本円にして約3.3兆円ということなので、その規模の大きさには驚くばかりです。日本企業における海外でのM&Aでは過去最大規模になると東洋経済の記事に書かれていました。
取締役会では承認済み
すでにソフトバックグループの取締役会では承認されているということなので、ARMの株主や英国の裁判所の承認を受けてから9月末までに買収を完了させる予定です。
ARMは当初の社名は「Advanced RISC Machines」でした。ARMアーキテクチャのRISCチップを開発する会社です。ARMアーキテクチャはモバイル機器への組み込みに適している低消費電力という点が最大の特徴です。Wikipediaによれば32ビット組み込みCPUの75%以上がARMアーキテクチャに基づいたCPUが採用されているということですので、相当のシェアを誇っていることが判ります。また、NHKの記事によれば、世界のスマホやタブレット端末などのモバイル機器で85%の製品に採用されていると紹介されていました。
ARMとは
ARMでは半導体の開発や設計に特化して、自らは生産を行わないファブレス企業です。これにより工場などの大きな資産を持つ必要がなくなります。従業員は全部で4000人、いろいろな半導体メーカーなどおよそ300の企業に対して基本設計のライセンスを供与するなどして収益をあげています。
米国のインテルはパソコンのCPU市場では大きなシェアを持っていますが、スマホやタブレットなどの分野ではシェアを大きく落としてしまっています。モバイル機器やIOTが今後伸びると、さらにARMが伸びる余地が残されていることになります。
そんなARM Holdings社をソフトバンクは買収することで何を狙っているのでしょう。ソフトバンクグループの孫社長は英国ロンドンで記者会見を行いました。これから先、あらゆる物がインターネットにつながるIOT分野を強化するための投資であるとしています。きっと、今回の交渉を実施している舞台裏では、英国のEU離脱の報道などもあり、波乱があったのではないかと思います。そんな中での今日の日の発表でした。孫社長はARMの従業員数を向こう5年間で倍増させると意気込みを語りました。ARMは今後もソフトバックグループ内の独立した会社として、今後ともケンブリッジを本拠地にして事業を行っていきます。
今後のARM関係製品にどんな変化がもたらされるのか、気になってきました。
【2020/09/14追記】
売却を懸念する声
ソフトバンクグループがビジョンファンドとともに保有する英アームの全株式を米NVIDEAに最大400億ドルで売却することを発表しました。アーム社の共同創業者、ハーマン・ハウザー氏はNVIDEAに売却される報道を受けて「最悪の事態」であり、アームのビジネスモデルが崩壊するという認識を示したことが報道されていました。
【2022/02/09追記】
売却断念
ソフトバンクからアームの売却を断念するという発表がありました。
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