現在の計算機の性能を大幅に上回る能力を持つ量子コンピューターを11月20日にNTTが発表したという記事が日本経済新聞にありました。11月27日から無償公開されて試用することができるようになります。クラウドシステムとして提供されるようです。
国家プロジェクトの成果
国立情報学研究所や内閣府などの国家プロジェクトの成果で、研究開発の結果、24時間の連続運転ができる目処がついたことから公開することになったとされています。
スーパーコンピューターをもってすれば、今のアーキテクチャでは数千年かかるような計算を量子コンピューターであれば数分で完了することができるといいますので、かなりの能力アップです。別の記事では理化学研究所のスーパーコンピュータ「菖蒲」と比較して100倍の速度で計算できる能力があると紹介されていました。
以前は従来のアーキテクチャ(ノイマン型コンピュータ)のCPUもめまぐるしい性能向上を遂げていましたが、現在は一コアあたりの性能はぼぼ頭打ちになってきていて、複数のコアで性能を上げるような取り組みに変わってきています。これが量子コンピューターが導入されれば更なる性能向上の余地が生まれてきます。
今後、人工知能などの複雑な計算を瞬時に実施する必要がある分野で活躍してくれるものと期待されます。
現在、コンピューター技術、特にCPUについては、国内のベンダーの力はとても弱く海外の技術に頼っている部分が多いです。ニューズウィーク日本版の記事を見ると、今回の研究開発に投じられている金額は32億円で、欧米が投じている金額よりも一桁小さいという記事がありました。
今回は組み合わせ最適化問題に特化して開発を実施することで費用を抑えたとのことです
是非、研究開発費を重点投資する分野を決めて、もしも量子コンピューターの分野が集中投資の対象になるのであれば、各国をリードする技術開発を進めてほしいと思います。
【2017/12/11追記】
その後の報道を見ていると、こちらで紹介したコンピュータは量子コンピューターではないという異論が出ているそうです。
計算装置に一般的なパソコンに搭載されている集積回路が搭載されており、光を電気信号に変換して処理してしまうため、極小の粒子である量子の特徴がなくなってしまうからです。
量子コンピュータと呼べるかどうか?という議論なので、特定の問題を早く解くことができるという特徴に間違いはありません。
【2023年3月27日追記】
理化学研究所は国産初号機を研究者向けに提供
理化学研究所は国産初号機を開発して3月27日から研究者が利用できるサービスを開始しました。共同で研究する契約を結んだ大学や企業の研究者が使えます。
理化学研究所が開発した量子コンピュータは量子ビットが64あり、重ね合わせによって2の64乗通りの情報を同時に表すことができます。
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