富士通が低迷する携帯電話事業を立て直すのは難しいという判断から、携帯電話事業をしている子会社の富士通コネクテッドテクノロジーズの株式70%を約500億円で投資ファンドへ売却する方針を固めたという記事がNHKのWEBサイトに掲載されました。
売却先はポラリス・キャピタル・グループという投資ファンドです。富士通としては残りの30%の株式はそのまま保有して事業を継続するとしています。
また、商品名であるアローズ、らくらくスマートフォンなどはそのまま引き継ぎ、携帯電話を製造している工場もそのまま維持するとしています。
富士通として30%の出資を行っている子会社ということは、連結子会社ではなくなりますが、出資比率の30%分だけは持ち分方によって連結決算に組み込まれる形になります。従って、投資ファンドが事業の立て直しに成功した場合は、富士通もその一部の利益を得られるようになる形になります。
ただ、富士通が立て直すことができない携帯電話事業を投資ファンドが買うということは、投資ファンドとしては何らかの事業再生の手段を持っているということだと思うのですが、携帯電話事業については国内のどのメーカーも苦しんでいます。
NECやパナソニックは2013年にスマートフォン事業の撤退を発表していますので、京セラやSONYといった会社に限られてしまうことになりそうです。
以前のフューチャーフォン(ガラケー)が全盛だったときには、iモードなど日本独自の仕様が数多く組み込まれていたので、海外のメーカーから見ると、あまり日本の市場に進出するうまみはありませんでした。
しかし、その流れを大きく変えたのは、iPhoneの登場です。iPhoneは日本独自の仕様はまったく盛り込まないワールドワイドで使えるハードウエア仕様のままで、ソフトバンクを軸に一気にシェアを伸ばしました。日本のメーカーはiOSを搭載した端末を販売することができないので、android搭載端末を発売しましたが、中国や韓国などのメーカーへの対抗に苦戦しているのが実情です。
(最近ではApple社もFericaに対応したことで少し日本仕様の取り込みも行うようにはなりました)
NHKの報道のあと、ASCIIなどでは富士通に確認をとり、「交渉を行っていることは事実。現時点で決定していることはない」と認めているので、かなり信憑性のある情報ということで間違えは無いのでしょう。富士通としてはパソコン事業を昨年の11月にレノボへ売却しています。今後は成長の核となる分野に集中する態勢を確立していくのでしょう。
今後、正式に意思決定されれば、報道発表、具体的な投資ファンドへの移管、投資ファンドでの事業立て直しといった手順で進んでいくのはないかと思います。投資ファンドがどんな戦略で事業を立て直していくのか、非常に興味深いところです。
【2018/02/01追記】
正式に売却についてのニュースリリースが富士通から発表されました。事前にリークされていた情報と内容は同じで、子会社の70%の株式を投資ファンドへ売却、兵庫県にある工場は維持という内容でした。
売却額は500億円程度になる見通しとのことです。
【2020/04/28追記】
今でも富士通のブランドでスマホが発売されています。先日、楽天モバイルのRakuten UN-Limitを利用するために、富士通のarrows RXを購入し利用していますが、とても頑丈で使いやすい、良いスマホだと思います。
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