日本航空で旅客システム(アルテア)のAI効果で業績躍進

当サイトの記事には広告が含まれます

 日本航空は2017年11月に約50年間にわたって使い続けてきた旅客システムから新しいAIを活用できる旅客システムに移行しました。新しいシステムはスペインのアマデウス社が提供するクラウドサービスの「アルテア」です。アマデウス社は世界的な旅行、観光産業向けのIT企業で、流通システムとITソリューション事業エリアの2つで構成されています。

 アマデウス社のソリューションは鉄道会社、ホテルチェーン、空港事業者等で多く活用されており、2015年6月現在でスターアライアンスで65%、ワンワールドで67%、スカイチームで50%が採用しています。日本では全日空が国際線で2015年4月よりアルテアを利用しているとWikipediaに記載がありました。

 このアルテアへの更新にともない、国内線と国際線のシステムプラットフォームを統合し国内線と国際線の乗り継ぎがスムーズになったほか、各国の運賃制度の変更時にJALが個別に設定変更を実施する必要は無くなり、アルテアへアウトソースしてアルテア側で対応を実施してもらえるようになりました。

 さらに、大きいのがシステムの維持管理費用が固定費ではなく、搭乗旅客数と連動した変動費となることでシステム維持管理費用が低減できることも狙いの一つとなっていました。

 そんなアルテアの効果ですが、9月1日の日経新聞によれば、さらに増益にあたえる影響が出ていることが記事で紹介されていました。2018年の4月から6月で国際線の輸送能力を前年同期と比較して7%増強したのに対して、座席の利用数は9%も上回ったそうです。これはビジネスクラスの数を減らしてエコノミークラスの数を増やしたことに伴う影響もあるのですが、実は顧客1名あたりの単価は上がっているということで、ここにアルテアの貢献があったようです。

 アルテアには各便の予約状況をもとにチケットの価格設定を変動させるレベニューマネジメントの機能があり、従来は社員の長年の経験をもとに実施されていたチケットの価格設定を新しいシステムではAIに担わせたところ、需要を読み間違えて収入をロスすることが減少したと紹介されていました。

 日本ではAPAホテルがレベニューマネージメントを実践していて、同じホテルの客室でも繁忙期と閑散期とでは大きく値段は異なり、2016年ごろには普段は1万円もしない部屋が週末や大雪などの天候により3万円もの価格になるのはおかしいのではないか」という批判の声もあがっていたようです。いわば顧客の足元を見るような価格設定になってしまうので、あまりにも大きく価格の差をつけると批判を受けてしまうところがありそうです。この辺の消費者から見た感覚も踏まえてAIでは価格設定ができるようになっていくのでしょう。

 テレビで食材の健康効果がアピールされると、翌日にはスーパーの食品棚からその食材が売り切れて姿を消すといった現象がありますが、これもレベニューマネジメントが実践されれば変わってくるのかもしれません。テレビの番組表情報やTwitterにおける囁き情報などを分析すれば傾向が読めるのではないかと思います。

 まだまだ人工知能が活躍できそうな市場はたくさんありそうです。

コメント