先日、突然のように、米国IBM社がレッドハット社を買収する報道がなされています。買収にかかる金額は340億ドル、日本円にすると約3兆8000億円という莫大な金額です。レッドハット社の10月26日終値の株価に63%のプレミアムが乗せられた金額になります。この報道を受けて、10月29日の取引でレッドハット社の株価は45%上昇しました。
レッドハット社は1993年に創業した会社です。当初はLinuxのディストリビューターとして、Linuxのカーネル、GNUプロジェクト、BSD、X11等のソフトウエアを組み合わせて、ネットワークサーバーやワークステーションとして使えるようにしてきました。
2003年に公開された、Red Hat Linux 9を最後にして、コンシューマー向けのディストリビューションの販売やサポートを停止し、Fedora Projectに移譲しています。このときまでは、Linuxの雑誌にRed Hat LinuxのディストリビューションがDVD-ROMで添付されているような場合もありましたが、以降についてはFedoraが添付されるようになりました。
よく、自宅でサーバーを運用する際に、DVD月雑誌を購入してきて、パソコンにインストールを当時行っていたのをよく覚えています。WEBサーバーやメールサーバー等も簡単にインストールすることができて、重宝しました。
コンシューマー向けのビジネスから撤退した後は、企業向けに注力して事業を拡大してきました。最初はオープンソースを企業向けのエンタープライズシステムのプラットフォームに使うのは、実績の少なさから尻込みしていましたが、現時点では企業向けシステムでも普及を続けています。レッドハット社としては、Linux等のオープンソースソフト自体は無料ですが、更新や保守などのサービスは有償で提供しています。
また、2006年にはJBOSS Incを買収し、JBoss Enterprise Middlewareを市場投入しました。2008年にはQumranet社を買収し、KVMやデスクトップ仮想化などのオープンソースソフトウエアを販売しています。このように、オープンソースソフトウエアに関しては、OSだけではなく、各種ミドルウエアも扱うことができる企業に成長しています。
さらに2010年からはクラウド事業部を発足させて、IBM、AMAZON、ソフトバンク、富士通などのパブリッククラウド提供者と提携を結びました。現時点の報道を見ていると、IBM社はクラウド事業で出遅れているので、レッドハット社を買収したとする記事が多くみられました。
レッドハット社は2018年2月期の売上高は29億2000万ドル、利益額は2億5800万ドルに達しています。今回の買収が実施されたとすると、IBM社とレッドハット社の相乗効果が期待できるのかどうか、気になるところです。
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