日経新聞の記事を読むと、ファーストリテーリングの柳井会長兼社長が、「これからは情報産業とサービス業だけになる。小売業もなくなる」といった予測を語る記事がありました。デジタル化は消費者個々人の嗜好を生産に直結できる可能性を持つことや、既に始まっていますが電子商取引と小売業が競合し存在意義のある企業だけが生き残ることになると語っています。
確かに家電量販店で販売されているような商品、例えば洗濯機であれば、店頭で製品そのもの実物を見ることさえ出来てしまえば、何もその家電量販店で購入する必要はありません。ネットで型番をキーにして検索し、最も気に入ったお店で購入すれば良い状況になってしまっています。あまりネット通販を活用していない世代の人はそのまま量販店で購入する形になりますが、これからネット通販を多用している世代が購買層になってくると、量販店は大きな変革が迫られることになります。
従って画一的な製品を扱うチェーン店は厳しい状況になるという予測は、確かに理解できます。店舗ではそこでしか得ることができない何かを提供しなければいけませんそれはネット通販で得られる何かではいけないことになります。
アクアリウムの世界になりますが、アクアデザインアマノという会社は、自社の商品をネット上で販売することを禁じています。プロフェッショナルだと認定を受けた店舗の店員がきちんとお客様に商品のことを説明して販売することを大切にしたためです。実はこのような制度を入れる前は、ネット通販で価格的な大幅値引きが常態化するような状況になっており、この状況から脱したかった思いもあったものだと思います。従って、この場合はリアルな店舗で得られるものはプロフェッショナルショップの手厚いサポートということになるのでしょう。
眼鏡であれば店頭で購入すれば視力をその場できちんと測定してくれて、最も合った眼鏡を作ってもらえるというのが一つの差別化要素かもしれません。床屋もネット通販では提供しにくいサービスです。このような形でネット通販と実店舗できちんと差別化できている取り組みをしている例は、現時点ではそれほどは無いように思います。
今後、ネット通販が主流になり、量販店の数が減ってしまうとすると、実物を見ることができなくなってしまいます。この実物を選ぶための入場料が必要な展示施設ができるのかもしれません。もしくは、VRの技術が進化し、家にいながらにして商品の実物を目の前にして使い勝手を確かめられるようになるのかもしれません。
技術がどのように進化するのかによっても、リアルな店舗に求められる付加価値が違ってくるので、これからの社会の変化を予測するのはより難しいもののような気がしています。
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