2019年5月より、東急電鉄の駅にある券売機で銀行預金を引き出せるサービス(キャッシュアウトサービス)が始まりました。これは日本で初めてのサービスで、2015年に始まった「社内起業家育成制度」の第三弾案件として提案されたものだそうです。昨年の7月に開発を発表して一部の自動券売機で実証実験を行ったあと今回の正式サービスとなりました。
自動券売機
見た目は普通の切符の自動券売機なのですが、横浜銀行とゆうちょ銀行の預貯金を引き出すことができるようになっています。GMOペイメントゲートウェイとの共同開発です。この自動券売機が設置されているのは、東急世田谷線とこどもの国線を除く85駅、319台の券売機ということですので、かなり大規模にサービスを開始しました。預貯金を引き出すサービスは午前5時半から午後11時までと、便利さも確保しています。
QRコードの応用
面白いのはその利用方法です。横浜銀行(はまPay)またはゆうちょ銀行(ゆうちょPay)のスマホアプリで引き出す金額を入力して、スマホの画面に表示されるQRコードを券売機の読み取り部にかずすことで、キャッシュカードを利用することなく現金を引き出すことができます。(QRコードの有効期限は5分間)
スマホアプリにログインした状態で引き出し金額を入力すると、そのとき、その人専用のバーコードが生成されるようになっているのでしょう。クレジットカードを出さなくてよいのは楽で良いです。
事業者のメリット
最近ではSuicaやPASMOを利用する人が増えたために自動券売機を利用する人の数が大幅に減少しています。かといって、やはり切符を利用して乗車する人はいますので、完全に自動券売機を撤去するわけにもいきません。いわば少しお荷物のような状態になっていました。さらに自動券売機では以前のように切符を小銭に買う人よりも1万円札や千円札でチャージをする人が増えたため、お札が自動券売機の中に貯まるようになりました。1万円札はチャージや切符を買う用途だけであればお釣りとして消費者に還元されることはありませんので、以前であれば貯まった1万円札は回収するしかありませんでした。今度はこれが消費者に引き出してもらえるようになります。さらに、もしも1万円札が券売機のなかで紙幣切れをおこしてもチャージや切符を買うお客さんに迷惑をかけることはありません。
引き出しができる金額は、1万円、2万円、3万円の三種類です。2019年6月末まではキャンペーンで利用手数料は無料ですが、7月からは横浜銀行が108円(土日祝日は216円)、ゆうちょ銀行は2020年1月3日までは108円です。
各駅には銀行ATMが設置されていますが、これから先はATM自体の設置費や維持費が銀行にとっても大きな負担になります。ダイヤモンドの記事によれば1台のATMの価格は300万円、そして警備費や監視システムだけでも1台につき毎月30万円かかるというこということですので大変な費用です。
今回のように切符の自動券売機がATMとしての機能を併せ持つことができるようになれば設置費、維持費の負担が減ります。また、自動券売機であれば裏側には駅員さんがいますので、紙幣詰まりなどが発生した時の対応も安心なのではないかと思います。
券売機の可能性
今回の報道を見て、普段見過ごしがちだった駅の自動券売機には大きな可能性がありそうな気がしてきました。コンサートチケットの購入や施設の利用予約、住民票の取り出しといったいろいろなことを券売機一台で多様にこなせる時代が来てもおかしくないように思います。しかも、身近な駅にそのような機械が設置されていれば、通勤、通学の途中でコンビニ以上に便利に使える局面も多いのではないでしょうか。
コメント