理化学研究所ではスーパーコンピューター「京」を運用しています。文部科学省が推進するハイパフォーマンスコンピューティングインフラ(HPCI)の中核システムとして理化学研究所と富士通が共同開発を行い、2012年にサービスを開始しました。計算速度は10ペタフロップスにもなります。
スーパーコンピューター「京」
京は2009年の開発段階で民主党の事業仕分けを実施する中で、「2位ではだめなのか」との指摘により予算が縮小されそうになったことでも有名になりました。しかい、結局は当時の性能ランキングで世界首位になりました。しかし、すでに10年近くもの「とき」の流れにより、米国や中国に性能で抜かれてしまい、現在は18位になっています。
ポスト「京」
そこで、ポスト「京」スーパーコンピューターが、2020年代にますます複雑化する社会のさまざまあ課題の解決やサイエンスの探求を通じて日本の成長に貢献し世界をリードする成果を生み出すことを目的にして開発を進められています。単に計算性能が高いだけではなく、画期的な成果の創出や利用者の利便性、使い勝手の良さ、電力性能の総合力で世界最高レベルのコンピュータを目指しています。
ポスト「京」の解決するテーマ
最大で「京」の100倍の性能を活かして、創薬や防災、各種シミュレーション、深層学習、ビッグデータ基盤等で活躍することが期待されています。具体的には下記の9つの重点課題解決のために使われることが決まっています。
(1)生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築
(2)個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学
(3)地震・津波による複合災害の統合的予測システムの構築
(4)観測ビッグデータを活用した気象と地球環境の予測の高度化
(5)エネルギーの高効率な創出、変換、貯蔵、利用の新規基盤技術の開発
(6)革新的クリーンエネルギーシステムの実用化
(7)次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成
(8)近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発
(9)宇宙の基本法則と進化の解明
ポスト「京」のアーキテクチャ
命令セットのアーキテクチャはArm(Armv8.2-A SVE 512bit)です。富士通が独自にアーキテクチャを拡張して、ハードウェアバリア、セクタキャッシュ、プリフェッチを実装しています。計算コア数は48+2アシスタントコアです。
プログラミング環境としては、Fortran2008 & Fortran2018サブセット、C11 & GNU拡張仕様・Clang拡張仕様、C++14 & C++17サブセット & GNU拡張仕様・Clang拡張仕様、OpenMP 4.5 & OpenMP 5.0サブセット、Javaのコンパイラが準備されます。
名前は「富岳」
このポスト「京」スーパーコンピューターの名前が「富岳」となることが、理化学研究所から発表されました。この富岳により、どんな新しい成果が得られるのか、今後が楽しみです。
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