読売新聞の記事にJR東日本がワンマン運転の対象路線を拡大するという報道がありました。現時点では2両編成以下の列車を対象にワンマン運転を実施していますが、これを3両編成以上の列車にも広げます。
人手不足に伴う合理化
人手不足に伴う合理化が理由とされていますが、実態は安全確保を犠牲にした合理化の促進なのでしょう。
2両編成までと決めた理由は、ドア締めなどで安全確認ができる限度が2両までだからです。客の乗降を確認できるモニターを運転席に設置するのだそうです。
このモニターだけでよしとするのは、普通の車で言えば、リアカメラの映像だけで、バックするようなものです。車ではモニターに頼らずに後方を実際に確認するように求めています。なぜ、たくさんの人が利用する電車がモニターだけの確認で大丈夫なのでしょうか?
また、列車内で急病人や車内トラブルが発生したり、事故が発生したりした場合の対応は運転手一人で一時対応をしなければいけません。運転手の負担は増えるばかりです。復旧までに時間がかかるので電車の遅れも間違えなく増えるのではないでしょうか。
ホームドアが整備されれば、山手線や中央線などの主要路線にもワンマン化を導入する考えのようですが、すでに駅員の業務などはグループ会社に委託してしまい、その駅員の数も削減され、すでにトラブル対応に時間を要する事態になっています。中央総武線は遅れが1番多い路線でもあり、ワンマン化を考える前にまずは安全対策と定時運行ができる体質を確保しなければいけません。
JR東日本ては人手不足を理由に挙げていますが、こちらに面白いデータがありました。
この記事によると、JR東日本の運転手の給与は、京王電鉄や小田急、都営地下鉄、東京メトロなどよりも、年収で100万円ほど安い水準です。これでは、JR東日本に人が集まらず、人手不足になることは容易に想像できます。
売上高営業利益率で見ると、こちらに記事がありました。
JR東日本が18.5%、京王電鉄が13.5%です。京王電鉄は営業利益率が低いのは、「安全性、サービス向上の観点から費用を減らすことはできないという点はあるが、むしろ運賃水準が影響しているのではないか」とインタビューに答えています。
運賃が安く必要なところにはきちんとお金をかけている点で見習うべき点が多いと思います。京王電鉄の方が売上高営業利益率が低いのにJR東日本の方が運転手の給与が低いというのは企業姿勢がよく表れていると思います。
JR東日本についてはワンマン化の拡大を考える前に安全対策やトラブル防止による電車の定時運行率を上げる方が先だと思います。
【2020/06/28追記】
京浜東北線でワンマン運転に向けての検討?
JR東日本では埼玉県と神奈川県を結ぶ京浜東北線でワンマン運転を始める方向で検討に入ったことが共同通信により報じられていました。2024年度をめどに車両側面にカメラで乗客の乗り降りを確認できる機能を備えた新型車両を投入します。また、ボタンを押すだけで停止や速度調整ができる自動運転装置を搭載して運転士の負担を軽減するということですが、私自身は混雑する都心での電車のワンマン化は反対です。
【2022/07/20追記】
東京メトロ有楽町線でワンマン運転を開始
東京メトロの有楽町線でワンマン運転を8月6日から開始します。既に和光市駅から小竹向原駅間ではワンマン運転が実施されてきましたが、8がつ6日からは小竹向原から新木場駅までの区間でもワンマン運転に踏み切ります。
東京メトロ有楽町線は西武新宿線、西武池袋線、東武東上線との乗り入れ運転を実施していて、どこかの路線で電車の遅れが発生すると連鎖的に遅れにつながることもあります。
ワンマン運転になり運転手に負担がかかったとき、平常時はたとえ大丈夫でも、異常が発生したときの対応は運転手一人でどこまで大丈夫なのでしょうか。
乗客の安全がどこまで確保できるのか、非常に心配しています。
【2023年4月27日追記】
東京メトロ有楽町線でワンマン運転
先日、東京メトロ有楽町線に乗っていると、ドア上の液晶パネルに「この電車はワンマン運転を実施しています」と表示されていました。いつの間にか、ワンマン運転に切り替えたようです。
すでにこの電車は朝のラッシュ時で7分遅れ、しかも途中駅では「電車の最後部で電車から離れない客」があったようで、駅員が「すぐに電車から離れてください」と何回もホームでアナウンス、電車の発車はさらに遅れるというカオスな状況になっていました。
長距離高速バスは過去の大事故を教訓として、その走行距離に応じて、ドライバーの途中での交代を義務づけるなど、安全対策がとられていますが、都会の通勤電車でも会社による無理な合理化による大事故が発生する前に、乗客500人につき一人の乗務員を乗車させるといった規制を設けるべきではないかと思います。
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