「政府のシステムをAWS上に構築へ」で本当に良いか(2024年現在では低迷中)

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 今日の日経新聞を見ていると、政府の人事・給与や文書管理などの各省共通の基盤システムをアマゾン・ドット・コム傘下のクラウド企業に発注する調整に入ったという報道がありました。2026年度までに約300億円を投資すると報じられています。

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日本の政府の姿勢

 この報道を見て心配になったことはただ一つ、「日本国政府は自国の産業発展に向けてはあまり興味が無いのだな」ということです。

 経済産業省は「今が日本の第四次産業革命への分かれ道」だと笛を吹きますが、結局のところ国が使うのは米国のサービスです。これで、日立や富士通、日本電気といった日本で頑張ってきた会社がサービスビジネスを立ち上げていくだけの投資体力がついていくのでしょうか。

 もちろん、国際調達の課題もありますし、発注先は公正に選択しなければいけません。今回もきちんと入札をして発注先を決めているのだと思います。

 ただ、国内の会社が生き残って、かつ成長していくためのシナリオは国も一緒になって考えていかなければいけません。国際競争力のある自国の産業をどう育てていくのか、本気で考えているのでしょうか。

 トランプ大統領はアメリカファーストを訴えています。日本政府の行動を見ていると、世界のルールの中で無難に選択していけばよいと考えているようにも見えてしまいます。

2024年6月12日追記

 さすがに外国製のソリューションばかりを日本国政府が担ぐのはいかがなものかと方向性の見直しが行われたようで、河野大臣は2023年11月28日の記者会見で、「さくらインターネット」を政府クラウドの提供事業者に追加することを発表しました。

 さくらインターネットは、こちらのブログの情報発信でも利用している基盤で、とても安定しているのですが、AWSなどと比較すると、その規模、提供されている機能等で大きく遅れをとっていることも事実です。今回の政府クラウド提供事業者と認定されたことで、さくらインターネットの基盤上で動くシステムが増加し、さくらインターネットとしても経営の基盤の安定と新たな付加価値提供への投資が出来るような体力がついていくことが大事だと思います。

廃れゆく日本のソリューション

 クラウドのブームの前、DBMSでも同じことを感じました。日立のHiRDB、富士通のSymfoWAREなど、各社で技術開発を進めているソリューションがあるにもかかわらず、政府は無難にOracleを選択する傾向が強かったように感じます。高速鉄道であれば日本で開発した新幹線方式が真っ先に採用されるのに、IT技術に関してはなぜ日本の方式は採用されないのでしょう。とても不思議に感じます。

 第四次産業革命で勝ち抜くためには、もう少し官民でベクトルを一つにした戦略がIT政策の中でも必要なのではないかと思います。

【2022/07/21追記】

経済産業省は国産クラウドサービスの開発促進を決定

 経済産業省は7月20日に経済安全保障の観点から国産のクラウドサービスの開発促進を加速させる方針を明らかにしました。正直、10年遅い決断だと思いますが、舵を切ったことは良いことだと思います。クラウドは政府の機密情報や行政が扱う個人情報を利用しますが、これらは危機管理上、国産サービスを扱う必要があると判断したと報道されています。

【2024年6月12日追記】

政府クラウド(ガバメントクラウド)の活用は低迷中

 政府として経費節減を進めるためにガバメントクラウドの施策を推進していますが、活用が滞っていることが報道されています。国は2025年までに2020年度比で3割の運用経費を削減する目標を立てていますが、それまでで移行できる国のシステムは全体の二割弱にとどまります。全国民の情報を厳格に管理する巨大なシステムjにおいては、クラウドへの移行が困難と思いますので、システム数ベースで2割(全1100システムのうち200システム程度)だとしても、運用経費の予算ベースではもっとかなり低い比率になるものと想定されます。

 ガバメントクラウドはデジタル庁が整備を進めていて、クラウド基盤上にシステムを集約することで、行政機関どおしの情報連携をスムーズにする狙いもあります。

 AWS等のクラウドに大規模なシステムを移行することが本当に保守経費も含めた全体経費の節減になるのか、よくよく検討をした方が良いタイミングなのかもしれません。

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