東洋経済オンラインを読んでいると、「日本でイノベーションが生まれなくなった真因」という記事が公開されていました。
研究者一人当たりの生産性
この中で、研究者一人当たりの生産性を横軸に一人当たり研究開発費、縦軸に一人当たり特許出願件数でプロットした折れ線グラフがあったのですが、日本は高止まりしたところでほぼ停滞、米国は日本の半数程度の件数のところで停滞、中国は右肩上がりで日本の件数を追い越しているというグラフでした。(中国は少ない研究開発費の中で多くの特許出願をしていることになる)
ここから記事では研究者一人当たりの生産性の低下がボトルネックになっているという仮説を立てています。ただ、ここが本当なのか少し疑問に思うところがあります。日本の企業では2010年頃までは知的財産権を守るために、どんどん特許を出願しようというムードに満ち溢れていた感じがします。
日本の特許出願件数の推移
日本の特許出願件数を調べてみると、2005年が43万件ほどであったものが、2018年には31万件ほどまでに減り続けていることが判ります。特許登録件数については2013年までずっと上向き傾向であったものが2014年と15年で大きな落ち込みを見せて、その後は横ばいです。
松田国際特許事務所のサイトでは2008年後半からリーマンショックなどの原因で大きく減少したという記載がありました。この出願件数が減少傾向にあることは、先行技術調査の精度を高めるなどして出願を厳選されるようになったこと、外国出願が重要視されてその分、国内出願にかけられる予算が減ってしまっていることなどが原因として挙げられていました。
ちなみに日本の特許庁を受理官庁としたPCT国際出願の件数は2014年に一時減ったことはあるものの基本的には増え続けているとしています。
日本でイノベーションが生まれなくなった真因の究明に研究者一人当たりの生産性を用いて、さらにその生産性の算出に特許出願件数を使うのは少し乱暴かなと思いました。これは評価が難しいと思いますが、特許の内容を質という側面で見たときに推移がどうなのかを用いて評価しないといけないように思います。
ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由
ちょうど同じ時期にダイヤモンドオンラインに、「ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由」という記事が載っていました。盛田さん、井深さんを間近で見てきた元副会長森尾稔氏のインタビュー記事です。
この中で、井深氏が発言した「君らがみんなで相談してあれかこれか、なんて言ったところで、イノベーションは起こせないよ」とか、元社長の岩間氏がCCD撮像素子の開発を推進した際、「社長の道楽としてやらしてもらいます」といった話しはとても興味深いと思いました。
イノベーションのジレンマで言うと、最初は性能が低くて見向きもされないような破壊的イノベーションが急速に性能を上げていき、やがて世の中でスタンダードになっている技術を駆逐していく、この破壊的イノベーションを見つけ出して最初は採算がとれなくても磨き上げ続けることができるかどうかが大事なのでしょう。
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