今回、特別定額給付金の世帯主への給付で自治体に大きな手間がかかっていることを受けて、政府が預貯金口座にマイナンバー登録を義務付けることの検討に入ったことが報道されています。これを受けて共産党の小池書記局長が個人情報保護の観点から問題があるとして容認できないという考えを示したことがNHKで報道されていました。
サラリーマンは源泉徴収で税金がガラス張りで差し引かれていくのに対して、それ以外の人は収入の実態がつかみにくく、税を適切に負担されているかどうかが判らないところに課題があり、これを是正するためにすべての預貯金口座にマイナンバー登録をする必要があったのだと思っていました。しかし、給付金の支払いを円滑にするためにすべての預貯金口座にマイナンバー登録を義務付けるというたてまえになってしまって、何となく混乱しているような気がしています。
今回の記者会見でも「給付のための紐づけであればすべての口座ではなく1つでいいはずだ」という指摘が行われていますが、その通りだと思います。
高市総務大臣も記者会見の中で、「口座の中身ではなく、どの金融機関に口座があるかを確認できるものであり、政府にすべての金融資産情報が把握されるのではないかといった心配は必要ない」という説明をしていて、やはり一歩後退しているような印象を受けました。
現在も銀行や証券会社などの金融機関では、マイナンバーの届け出をお願いという形で進めようとしています。そのリーフレット(「マイナンバーの届出にご協力ください」 全国銀行協会、内閣府、個人情報保護委員会)を読むとQAが掲載されていて、例えば、「銀行はどんなことにマイナンバーを使うの?」という質問に対して、「銀行が万が一破綻したときに預貯金の円滑な払戻しを行うために利用したり、これまでも行われてきた行政機関などの税務調査や生活保護などの資産調査への回答を行うためなどに利用します」という回答が掲載されています。また、「マイナンバーを届け出ると行政機関などに資産を知られてしまうの?」という質問に対しては、「マイナンバーの届出をきっかけに銀行が行政機関などに預貯金残高などをお知らせすることはありません」と回答しています。「税務調査や生活保護などの資産調査への回答を行う」という回答と少し矛盾しているような気もします。
情報漏洩などが発生しないよう最大限の対策が必要になりますが、私自身はすべての預貯金口座の情報がマイナンバーで結ばれて、税の徴収も全てがガラス張りの中で行われるようになった方が良いのではないかと思います。
【2020/06/09追記】
高市総務大臣がすべての口座へのマイナンバー登録義務化は見送る考えを明らかにしました。すべての口座をマイナンバーに紐付けると、所得などを国に把握される恐れがあるという批判を踏まえての判断になります。
一方、自民公明と日本維新の会が希望者に国の給付金などの振込先の口座を一つ、マイナンバー制度に登録させる法案を提出したことに対しては、来年の通常国会に提出してできれば義務化したい考えを明らかにしています。
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