2021年9月にデジタル庁を創設する方向で、菅内閣の目玉政策として着々と準備が進められています。デジタル庁は省庁の垣根を超えたデータのやり取りを強制する強い権限を持つこと、一時的な組織ではなく恒久的な組織とすることなどが既に報じられています。
民間人の登用
デジタル庁は非常勤職員も含めて500人規模の組織として2021年9月に発足する方向です。デジタル庁の長は首相が務めます。デジタル相(仮称)が事務を統括し副大臣や政務官を置く方向で検討されていることが日経で報じられています最初から500人規模の組織となると、かなり大きな組織です。内閣官房や各省庁に分散されている気機能も集約されるのでしょう。どんな機能が集まってくるのか興味深いです。
デジタル庁の発足に向け民間人材を4月に幹部候補を含む30人前後の公募を始め先行採用することが報じられています。これらの民間人は非常勤の国家公務員という位置づけにして兼業やテレワークなどの柔軟な働き方を認めるようです。非常勤の国家公務員という位置づけにすると各府省が比較的自由に採用方式を決められます。先行採用時の条件としては週2~3日程度の勤務を想定していると日本経済新聞では報じていました。年収は最大で一千数百万円程度でIT業界の第一線で活躍する人材の登用を目指すとしています。21年度の予算案では民間人の採用も含めてデジタル庁の人件費などで32.6憶円を確保したことを平井卓也デジタル改革相は明らかにしています。
政府は兼業を認める場合には、システム調達の公平性を保つために兼業で所属するITベンダーなどによる政府調達への参加を一部制限することも考えています。現在の所属元の会社における今後の事業戦略に影響を与えてしまうので気になる部分ではあります。
プラットフォーム構築の先導役
東洋経済の記事に「鳴り物入りデジタル庁の議論が残念な理由」という記事が12月17日に公開されていました。なかなか一企業では進めにくいプラットフォームの開発を政府が促進し異なった企業の製品を協調的に動かせるような標準化を図ることが関係する企業の競争力をあげイノベーションを促進することにつながるという内容の記事です。
現在、世の中を制しているプラットフォームを眺めてみると官主導もしくは官支援でうまくいったものは、あまり思い出すことができません。たとえば、音楽を購入する巨大なプラットフォームであるiTunesやスマホのアプリを配信するマーケットを制するAppStoreはAppleですし、巨大なECモールのプラットフォームであればAmazonや楽天といった企業と紐づいています。また、大規模なクラウドサービスであればAmazonのAWS、マイクロソフトのAzureなどが挙げられます。どれも官主導ではなさそうです。
官がプラットフォームの構想を練り主導するよりは、自国の産業を強化する施策を通して、各企業が投資をする意欲を持つことができる環境を整備していくことが大事だと思います。
自国の産業育成が必要
一方で政府は日本の自国の産業を育成するような政策は遅れていると思います。例えば、政府はクラウド・バイ・デフォルト原則を打ち出したところまでは良かったと思うのですが、政府共通プラットフォームではAmazonが提供するクラウドサービスであるAWSを利用することを決めてしまいました。
日本でもクラウドを提供する事業者は多くありますが、AWSの採用ということで世の中の主流にのった形になっています。日本の官庁全てのシステムがAWSに移行されるわけではないと解説しているサイトもありましたが、どの程度のシステムが移行されていくのか気になるところです。また、AWS自体も障害により止まってしまうこともあります。そのとき政府のインフラが一斉に止まってしまっては問題が大きくなるので、他の事業者が提供するクラウドに代替機能を設置する等、何らかの対策も必要になるものと思います。
オンプレミスでシステムを構築する際も日立製作所や富士通といった国内各社が提供しているDBMSの採用例よりもOracleの採用例の方がよく耳にします。デファクトスタンダードなプラットフォームを政府が旗振りする以前に、自国の産業を育成する政策の方が求められているのではないでしょうか。
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