コロナ禍で旅行の自粛が呼びかけられている中で、近畿日本ツーリストなどを傘下に持っている旅行大手のKNT‐CTホールディングスは去年12月末の時点で負債が資産を上回り債務超過になったことを2月9日に発表しました。およそ34億円あまりの債務超過になったとのことです。
新型コロナウイルスの感染拡大以前より、旅行の申し込みはインターネットで行うことが一般的になっていたので、国内の昔からある大手の旅行業者はネット旅行業者と競争が激化していました。インターネットがない時代は旅行に行きたいときには時刻表の巻末ページにあったホテル・旅館の一覧で宿泊先を選んで電話予約、切符はみどりの窓口などに行って購入、それが面倒であれば旅行代理店の窓口に行って申し込みというのが通例でした。この時代が大手旅行業者がもっとも輝いていた時期だったのではないかと思います。
その後はインターネットの普及に伴い、旅の窓口といったネット型旅行代理店が登場して、その後、旅の窓口は楽天に買収されて楽天トラベルになったりで力をつけていきました。大手旅行代理店もインターネットで旅行を申し込めるようにはしていましたが、JTBの場合は旅行券はネット申込では利用できなかったり、インターネットで販売している安いプランは窓口で購入できなかったりと、少し違和感があるような運営を余儀なくされていました。
そんな苦戦を強いられていた上に、今回のコロナ禍での旅行自粛は本当に旅行代理店にとっては大きな痛手だったのではないかと思います。学校の修学旅行のような団体需要もなくなってしまったので厳しさはより一層のものだったのでしょう。
こちらがKNT‐CTホールディングスの公式サイトです。
2020年4~12月期の業績は売上高が前年同期比81.1%減の612億円となりました。8割減というのは本当に厳しい状況だと思います。営業損益が261億円の赤字、純損益が216億円の赤字でした。
また、3月末までの1年間の業績見通しをこれまでの170億円の赤字から370億円の赤字に下方修正しました。これは旅行の需要が落ち込んでいることに加えて先月に募集した希望退職に1300人余りが応募して退職金などの費用として60億円を特別損失として計上したことが要因です。
今後の経営の効率化に向けて全国に138ある近畿日本ツーリストの店舗を来年度の末までに1/3に統廃合するほか、7000人の社員を2024年末までに2/3に削減するとしています。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、サラリーマンの仕事の仕方がテレワークになったほか、企業そのものもデジタルに取り残されると厳しい局面に立たされるという、日本の産業構造を抜本から変えてしまうほどの大きな出来事だったように思います。
【2021/02/24追記】
新型コロナワクチン接種事務代行
大手旅行会社ではワクチンの接種がこれから本格化することに向けて、予約の受付や接種会場の運営などの事務を自治体から受託する動きが出ています。
日本旅行では全国およそ60の自治体から受託するとのことです。JTBは世田谷区などの複数の自治体、近畿日本ツーリストも複数の自治体から受託することを決めています。
旅行の需要が落ち込む中で、自社が持っている経営資源を有効に使う事業として興味深い取り組みだと思います。
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