楽天グループの格付けが投資不適格に引き下げ

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 米国の格付け会社であるS&Pグローバル・レーティングが、7月26日に楽天グループの長期会社格付けを「トリプルBマイナス」から、一般的には投資不適格とみなされる「ダブルBプラス」に1段階引き下げたことを発表し、いくつかの報道機関で取り上げられています。

 今回、格付けが落とされた理由は携帯電話事業を進めるために日本全国への基地局設置などで巨額の投資を進めているため、財務体質の悪化が見込まれることが考慮されています。

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格付けの変更に伴う市場への影響

 この発表を受けて7月27日の東京証券取引所では楽天グループの株価は前日の終値から100円前後の値下がりで推移しています。以前から格下げが行われるのではないかと予想するニュースもありましたが、株価にはまだ織り込まれていたわけではなく、報道を受けて反応する形になりました。

 2021年3月末現在における総務省の調査では、楽天モバイルの契約数は290万件でシェアは約1.5%とされています。また、5月11日の楽天モバイルの発表によれば累計申し込み数は410万、4Gの人口カバー率80%を突破しているとしています。総務省の発表と楽天の発表で数字に大きな差があるのは、総務省が契約数なのに対して楽天は累計申し込み数で発表しているためでしょう。

 楽天モバイルが早期に先行投資を回収するためのカギは契約者数を増やすことと、キャンペーンの無料期間が終わったあとの有料契約の中で、実際に売り上げが立つ1GB以上のデータ通信をしてくれるお客さんの数が増えること、楽天モバイルへの加入者が楽天が提供する他のサービスを利用し全体としての売り上げが拡大することです。

 今後も人口カバー率を上げるために基地局の設置工事は続いていくものと想定されます。この先行投資が続くこと自体は避けられないものですが、売り上げがどの程度の勢いで今後上がっていくかが事業として成立する見通しが立つかどうかのポイントになります。FY2021の1Q末で楽天モバイルの売り上げは56,723百万円、営業損失は-94,073百万円と発表されていますが、今後この売り上げがどの程度伸びていくのかが気になるところです。

 また、楽天の経営が厳しいのではないか?という雰囲気が色濃くなると楽天銀行や楽天証券といった金融業への影響も心配です。楽天モバイル自体は楽天の自営回線エリアが非常に広がったことはとてもよく感じますので、不安を払拭できるようなアプローチをこれからも続けていくことを期待しています。

【2024年10月10日追記】

2024年10月現在の楽天グループの格付け

 楽天グループの公式サイトで2023年6月21日現在の情報として、下記のように格付けの内容が公開されています。(格付・社債情報|楽天グループ株式会社 (rakuten.co.jp)

格付機関名長期短期
格付投資情報センター(R&I) BBB+a-2
日本格付研究所(JCR) A-J-1
S&Pグローバル・レーティングBB

 格付投資情報センターでは下記のように格付けを定義しています。(格付符号と定義 |信用格付関連 |格付投資情報センター (r-i.co.jp)

AAA信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。
AA信用力は極めて高く、優れた要素がある。
A信用力は高く、部分的に優れた要素がある。
BBB信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。
BB信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。
B信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。
CCC信用力に重大な問題があり、金融債務が不履行に陥る懸念が強い。
CC発行体のすべての金融債務が不履行に陥る懸念が強い。
D発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付。

 したがって、本エントリーを公開した2021年7月では格付けが「BB+」になっていたことと比較すると、2024年10月現在では「BBB+」となっているので、格付けは上がったことになります。

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