楽天グループは独の1&1社という携帯電話会社と携帯電話ネットワークの構築に関するパートナーシップ契約を締結したことを明らかにしました。契約額については未公表です。(時事通信では総額で2000億円超とみられる、日経では2500億円超と報じています)
従来の携帯電話ネットワークでは限定的なネットワークベンダーによって独自に構築されることが一般的でしたが、楽天モバイルのネットワークでは特定のベンダに依存しない汎用的な技術や仮想基盤技術を用いてネットワークを構築しています。ここで培った技術を他の携帯電話会社に展開する取り組みを以前から楽天グループでは進めてきました。この取り組みで1番最初の成果が独の1&1社ということになります。
楽天は1&1社の既存のネットワーク機器の構築を引き継いで、同社のパフォーマンス向上を図るほか、ネットワーク構築においては無線アクセスネットワーク、コアネットワーク、クラウド、オペレーションに関する様々なソリューションで構成される「Rakuten Communications Platform」(RCP)のスタックとパートナー企業のエコシステムを活用するとしています。
ではこのパートナーシップ契約により、欧州では初となる完全仮想化モバイルネットワークを構築することになります。
完全仮想化モバイルネットワークでは、すべてのネットワーク機能はクラウド上に配備されてソフトウェアとして機能します。従来であれば、基地局で複雑な改修やメンテナンスを実施しなければいけなかったのが、クラウド上のソフトウェアのアップデートにより効率的に作業を行うことができると紹介されています。
2020年11月に開催された日経フォーラムで三木谷社長は、「RCPでは基地局にコストが高い専用機を使わず、汎用機とクラウドを使う独自方式で、投資・運用コストを3~4割削減できる」と紹介していました。
さらに楽天グループでは通信プラットフォーム事業や関連の子会社を集約する新部門である「楽天シンフォニー」を設立することも発表しました。RCPやOpen RANソフトウェア、アルティオスター社、イノアイ社、楽天の通信ソリューションや関連子会社・組織を楽天シンフォニーに集約します。楽天モバイルは日本における携帯電話サービスの事業会社という位置づけになります。
楽天が4番目のキャリアとして国内の携帯電話事業に参入すると発表した際には、本当に大丈夫なのか等、疑問視する声もありました。
しかし、現時点ではネットワーク自体も大きなトラブルが発生することもなく安定してサービスを提供できていますし、また着実に基地局を設置してエリアを拡大しています。基地局設置計画に関しては以前大きく前倒ししましたが、世界的な電子部品の品不足から設置に遅れが出ていることは少し心配な点です。
また、昨日は楽天モバイルの利用者にメールを提供する計画が夏から年内に遅れたことも発表されたので、他社に技術提供する前に自社分を何とかしてほしいという気もします。
今は積極的に拡大のために総力を結集しているところなので、今後は何とか折り合いをつけて進めていくことになるのでしょう。
Amazonはインターネット上の本屋さんとしてスタートして、総合百貨店、インフラ技術を活用してクラウドで世界のシェアを握りました。楽天が世界で携帯電話ネットワーク基盤のシェアを握ることができるのかどうか、今後の展開が楽しみです。
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