デジタル庁の牧島かれん大臣の会見を見ていると、行政が利用するクラウド基盤の提供業社は海外の2社で決定したことを発表していました。3社が応募したようですが、調達仕様を満足するサービスとして海外2社で決定したとのことです。非採用になった一社が日本の企業か否かは非公表です。
記者からはなぜこの2社に決まったのか?、大臣個人の見解として日本に根ざした企業の育成についてどう考えているか?といった質問がありましたが、「セキュリティや業務継続性などの項目を満足した2社に決定した」という回答に終始していました。
経済産業省はデシダルでデータ活用による産業の発展を呼びかける中、デジタル庁は国内のクラウドサービス提供会社を外してしまったことはとても残念なことだと思います。今回の調達仕様書でどんな要件が盛り込まれていたかは分からないのですが、政府では早い段階で満たすべき要件のガイドラインを公開して国内業者に対する指導、育成も進めなければいけないと思います。
調べてみると、今回の実証事業のサービス事業者は10月4日にデジタル庁から発表されています。わずか、3週間ほどで業者が決定されたことになります。これでは応募する事業者に十分な時間がなかったのではないかと思います。
例えば、富士通では2020年にガバメントクラウドに参入することを発表しています。このニュースリリースの中には「政府情報システムに求められる安全性基準に対応」と明記されています。
富士通が今回の事業に応募したのかどうかは分かりませんが、なぜ採択されなかったのかが、とても気になります。今後はオンプレミスからクラウドへの潮流は続くことは間違えありませんので、日本の大手のメーカーも非常に大きな興味を持っていたはずです。
もちろん、調達の段階で日本の業者に配慮すると、調達の公平性が担保できなくなりますので、調達が行われる前の段階でいかに日本の業者を育成するかが大事だと思います。
今回の実証事業は予算が確保されている2022年3月までの契約です。
クラウドに必要な機能を実装するためには時間が必要なので、2022年4月以降のクラウドサービスの調達に向けては満たすべき要件を早期に公開し、各事業者が実装するための期間を十分に準備する必要があると思います。
また、クラウドが独自に提供する機能にプログラムが大きく依存しすぎると、クラウドロックインになってしまって、他のクラウドサービスに乗り換えることが難しくなってしまうので、いかに独自サービスへの依存度を下げていくのかも実証事業で検証すべき課題になるでしょう。
【2021/12/21追記】
政府情報システムのためのセキュリティ評価制度
政府情報システムのためのセキュリティ評価制度というものがあり、下記のサービスがリストに登録されたことが発表されました。
- さくらのクラウド
- 米Slack Technologies「Slack」
- インターネットイニシアティブの「IIJ GIO インフラストラクチャーP2」
- 富士通クラウドテクノロジーズの「ニフクラ/FJcloud-V」
- 人材管理システム「カオナビ」
- 弁護士ドットコムの電子サインサービス「クラウドサイン」
など、14種類。日本の製品が選ばれているところが嬉しいです。
こちらに全ての一覧表があります。
ただ、ガバメントクラウドに採用されたか否かと、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度のリストに登録されるか否かは別の次元のもののようです。
【2022年10月3日追記】
ガバメントクラウドに海外2社追加
デジタル庁が日本政府の共通クラウド基盤、ガバメントクラウドとしてマイクロソフトのAzure、OracleのOCIを新たに選定したことを発表しました。AWSとGCPは引き続き採用されます。
残念ながら今回も日本のクラウド基盤は選ばれることはありませんでした。
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