オーディオ機器メーカーとして定評があったオンキョーが5月13日に自己破産申請をして裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。会社の設立は1946年、大阪電気音響として創業しています。
しかし、2014年3月期の決算以降は5期連続の最終赤字となり、2020年3月期と2021年3月期は2期連続で債務超過となった結果、2021年8月に上場廃止となっています。
オーディオ業界は1990年代くらいまでは順風満帆で、音質を探求して良い製品を出せば売れる時代が続いていたと思います。音楽を聴く媒体はLPレコードからコンパクトディスク(CD)に変わりましたが、じっくり音楽を聴くときには、オーディオセットの前に陣取って聞いていました。ドラマ「結婚できない男」で阿部寛さんが演じていた主人公がまさにこのスタイルだと思います。
しかし、MP3フォーマットが普及し始めて、iPodが登場したり、iTunes Music Storeが登場したりしたころから、急速に市場が変化したと思います。大きなオーディオセットは敬遠されることが多くなり、ミニコンポへ需要が移りました。核家族化に伴う住宅事情から大きな音で音楽を楽しめる環境が減ったことも原因だとおもいます。
スマホ(iPhone)やタブレットが普及すると、YouTubeなどで手軽に動画コンテンツを楽しむ人が増えて、ミニコンポすら買わない若い世代が大半になりました。ONKYOが得意としていた市場が急速に小さくなっていきます。
ONKYOもこの環境の変化を見逃していたわけではなく、安価でパソコンを販売していたSOTEC社を2009年に買収して傘下に収め、デジタルの進化に対応した企業になるため取り組みを進めていました。しかし、デジタル化の波には完全に乗ることができず、その後、パソコンのラインナップは大きく減っていくことになります。
会社の寿命30年説というものがあります。ONKYOの場合は1980年前後に一つの山場があったのかもしれません。ONKYOヒストリーを読むと、1976年から1985年はブランドロゴを一新したほか、重低音用スピーカーの発売、世界初のダブルカセットデッキの発売、高級スピーカーのジョセフ・レオン賞受賞など、高音質化や利便性向上に向けた様々な革新が行われていました。しかし、2010年ごろからの次の30年の山は環境の変化が激しすぎて乗り越えられなかったということなのかもしれません。
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