国内大手キャリアのauで7月2日午前1時35分ごろから大規模な回線障害が発生しています。
障害の原因
KDDIは障害の原因が音声通話用の交換機システムのトラブルにあることを明らかにしています。音声通話の交換機システム(VOLTE交換機)に大量のデータが集中したことにより、トラブルが生じたため、データ量を規制したとしています。VOLTEとはLTE回線の上にVoiceを載せる交換機です。
詳しいことは分かりませんが、装置の故障に伴い残っている装置に負荷が集中して、過負荷な状況になったため、通信の規制を行なっているということでしょうか。普通であれば、装置の故障があった場合は、予備の装置に切り替えて、現用のサービスには影響を与えないように制御するのが通例です。場合によっては、東日本のセンターがダメになったら西日本のセンターに切り替えるようなバックアップセンターを持っている場合も多いです。もちろん、auでも予め対策はとられていたものと思いますが、今回の障害では想定したように動作しなかったのでしょう。
影響が発生した範囲
- au
- povo
- UQモバイル
- 楽天モバイル(パートナー回線エリア)
- 気象庁アメダス観測点(約500か所)
- 大垣共立銀行のATM装置
- ヤマトの宅急便配送状況の管理
- JAL空港施設用の無線機
au、povo、UQモバイルだけでも契約数は3915万件になるということなので、日本人の3人に一人は影響を受けているかもしれません。
深刻なのは、110番や119番などの緊急通報も繋がりにくくなっている点です。人の命にもかかわる問題です。まずは復旧が優先ですが、これだけ長時間に及ぶ障害になってしまったため、総務省による行政処分も免れない状況です。(電気通信事業法では110番など緊急通報を扱う通信サービスで3万人以上に1時間以上の影響が出た場合は重大な事故とみなして総務省への報告を義務付けていている)
その他の影響
モバイルSuica、PASMO
通信障害が発生していても、事前にチャージされていて残高があれば利用することができます。定期券も通常通り使うことができます。
コンサートや映画のデジタルチケット
イオンシネマの場合、QRコードが表示できない場合には、チケット購入番号と暗証番号の入力で購入できます。
QRコードのスクリーンショットを撮っていたとしても使える場合と使えない場合があるようです。ジャニーズファミリークラブでは、大規模な電波障害の場合はスクリーンショットでの入場をお知らせする場合があるとしています。
SMS認証
致命的に影響が大きかったのは、2段階認証をオンにしているECサイトなどで、SMS認証をすることができなかった点ではないでしょうか。サービスによっては代わりの2段階認証の手段を登録できるようになっているので、携帯電話回線が今回のようにダメになったときに備えて、代替手段を登録しておくことの重要性を改めて認識する機会にもなりました。
再発防止策
もはや、通信ネットワークもどのキャリアも大規模化、複雑化しているため、これから先、au以外の会社でも同様なトラブルが発生する可能性があります。
ここまで長時間に及びませんでしたが、楽天モバイル、ソフトバンク(2018年12月)、NTTドコモ(2021年10月)でも通信障害が発生しています。当然、キャリア側でも再発防止のための対策をとっていくことになりますが、利用者側の対策としては複数のキャリアと契約してバックアップできるようにしておくことでしょう。
振替乗車
ただ、鉄道に例えると、京王線が信号機故障で電車の運行ができなくなった場合は、たとえば小田急線に振替乗車を実施します。
携帯電話回線がインフラとしてここまで大事なものになったので、通信回線でも振替乗車をできるようにすべきでしょう。通信における振替乗車とは、今回のようにauがダメになったら、NTTドコモやソフトバンク、楽天モバイルに自動的に切り替えられるようにする仕組みを作ることです。事前に大手キャリア間で協定を結んでおく必要がありますが、今回の場合は費用はauが負担することになります。
総務省は行政処分するばかりではなく、このようなインフラの安全性強化に向けた取り組みが必要だと思います。もちろん、3000万件もの契約が突然他社に流れたら、他社のネットワークも破綻してしまうため、緊急通話など優先順位が高いものを振り替える等の対策も必要になるでしょう。
振替乗車の例で考えると、個人で2社の通信回線と契約してバックアップしておくことは、なんとなく変な対策のように思えてきます。京王線がダメになった時のために小田急線の定期券も持っておくような対策であるためです。やはり、鉄道会社側の責任で他社と提携しておくように、携帯電話会社側で他社と提携しておくべきでしょう。
【2022/07/03追記】
復旧予定
7月3日の午前6時段階で全国的にデータ通信を中心にして徐々に回復してきていることが発表されました。西日本は午前7時15分、東日本は午前9時半を目標として復旧するよう取り組んでいるとのことです。
なお、午前6時時点で西日本は70%程度、東日本は40%程度回復しています。
【追記】
復旧予定時間の遅れ
その後、復旧予定時間がかなり後ろ倒しになり、西日本エリアは午前11時に復旧完了、東日本エリアは午後5時半に復旧完了予定となりました。
復旧作業中に意図せぬことも起こるので、目標の時間が遅れてしまったのは仕方がないことだと思います。最悪は間違っても仕方がないので、勇気をもって復旧予定時間を公表することが大事だと思います。
総務省は業者を恐縮させる会見
総務省の会見内容は後ろ向きな内容
総務大臣が記者会見を実施していたのですが、行政処分をチラつかせるのみで、行政として通信インフラが障害になったときに向けて、どんな対応を今後取っていくのか?という前向きな発言はテレビのニュースで見る限りは聞くことができませんでした。
総務省幹部をKDDIに派遣することの意味
さらに、通信分野を担当する次官級の総務審議官をKDDIに送り込み、復旧を急がせたと報道されています。総務省として一生懸命仕事をしていることのアピールだと思うのですが、次官級の人が行っても復旧時間が早くなるとはとても思えません。逆にKDDIの幹部が対応せざるを得なくなり、復旧時間には悪影響があるのではないでしょうか。
総務省としてできるとすれば、KDDIが技術的に困っているところがサポートできる、ソフトバンクやNTTドコモなどの技術者をKDDIに派遣することだったのではないかと思います。
やはり、大手キャリア間で障害発生時には助け合いをするしかないと思います。助け合いができるようにするための体制構築に向けての検討を総務省には進めてほしいです。
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