静岡県三島市の伊豆箱根バスの運転手が、2022年4月7日の午前中にマスクを着用していない乗客に対して「降りてください」と言ってバス停ではないところで降車させたことに対して、国土交通省中部運輸局が行政処分を実施したことが報道されていました。
2022年4月27日は全国で5万人強の新型コロナウイルス感染者が出ており緊張感が高まっていた時期です。「伊豆・三津シーパラダイス線」のバスの運転手は車内放送で女性客に対してマスクの着用を求めましたが客は従わず車内で言い合いになったということです。バスはバス停でないところで停車、乗客に「降りてください」と言って降車させました。当時のバスには25人の乗客が乗車していました。
これに対して、国土交通省中部運輸局は道路運送法に基づきバス2台を各25日間の使用停止とする行政処分を実施しました。読売新聞の報道によれば、「同運輸局などによると、同法などで泥酔した人や不潔な服装をした人の乗車を拒むことはできるが、マスクに関しての規定はない。航空機の場合は、航空会社の約款で搭乗を拒否されることがある」とされています。しかし、「道路運送法は正当な理由がある場合を除き、乗車を拒否してはならない」としていますので、この「正当な理由」の解釈が課題です。
伊豆箱根バスでは「お客様へのお願い」として下記の周知を実施しています。この中ではしっかりと乗客に対して「マスクの着用」を依頼しています。
他の乗客を感染から守るためにはマスクの着用を求めたことについて何ら問題はありません。他の乗客の健康を守ることは「正当な理由」だったのではないかと思います。(バス停ではないところで降ろしたことは、降ろした乗客の身の安全を守るうえで問題だったと思います)
この日、降ろされた乗客から伊豆箱根バスに苦情の連絡があり、バス会社がタクシーを手配しました。また、中部運輸局に対してもバス会社から報告しています。
しかも、「道路運送法に基づきバス2台を各25日間の使用停止」にするということ自体、行政処分として意味があるのでしょうか。地方のバス会社はお金を儲けるためにバスを運行しているというよりは、地域住民の足を守るために地域の支援も受けながら路線バスの運行を何とか続けているというのが実情だと思います。国土交通省中部運輸局が実施している行政処分の内容そのものも時代錯誤というか地域の住民のためになっていないというか、単に法令に基づいて処分しているだけで、法の目的などを無視した内容ではないかと思いました。
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