金融庁が投資信託の各販売会社に開示を求めている「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」の中で、面白いデータがあることをAERAで知りました。運用損益別顧客比率というKPIがあります。(投資信託の共通KPIに関する分析)
顧客が購入した投資信託の運用損益状況を損益区分ごとに公表しているデータです。投資信託を運用している顧客の中で運用益がプラスになっている顧客の率が一番高いのは楽天証券で、その率は99.1%となっています。楽天証券の公式サイトを見ると、さらに分析結果が公表されていて、投資信託保有者のうち、77.1%の顧客が積立投資を実施、その積立投資を行っている顧客の運用損益は、99.7%の方がプラスとなっているとされています。2024年についてはNISA枠でS&P500などを年初一括投資した方が利益が高かったという話しもありましたが、やはり着実に積立投資をした方が運用損益がマイナスになるリスクが低くなるということなのかもしれません。
例えば、銀行の区分の中で運用損益率プラスの顧客割合が高い順番で並べると下記のようになります。
- りそな銀行 95.9%
- イオン銀行 95.9%
- ソニー銀行 94.8%
- PayPay銀行 93.9%
- 三菱UFJ銀行 93.4%
- みずほ銀行 93.1%
- みずほ信託銀行 92.8%
- あおぞら銀行 91.5%
- 三井住友信託銀行 91.1%
- 三井住友銀行 90.5%
- ゆうちょ銀行 90.2%
- 三菱UFJ信託銀行 88.9%
- SMBC信託銀行 83.8%
- オリックス銀行 57.9%
金融庁がこのKPIを公表している主旨から考えると、もしも銀行で投資信託を選びたいときの一つの参考になるかもしれません。しかし、上記で紹介した銀行よりも、証券会社上位10社は運用損益率プラスの顧客割合が高いです。
証券会社の区分では運用損益率プラスの顧客割合が高い順番で上位10社を並べると以下のようになります。
- 楽天証券 99.1%
- SBI証券 98.9%
- PayPay証券 98.9%
- PWM日本証券 98.6%
- 大和コネクト証券 97.9%
- GMOクリック証券 97.3%
- マネックス証券 95.9%
- 野村證券 95.8%
- 百五証券 95.6%
- 岡三にいがた証券 95.3%
興味深いのは上位3社はネット証券である点です。4位に入っているPWM日本証券はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を通じて顧客に最適な投資プロセスを提供するために設立された専門証券会社です。なぜか、独立系ファイナンシャルアドバイザーのサポートがある証券会社よりも自分で商品を選ぶネット証券の方が、運用損益率プラスの顧客割合が高いというのは不思議な感じもします。PWM日本証券の公式サイトにはKPIを分析した結果も公表されていました。
金融庁がこのような形で同一の視点(KPI)で各金融機関から数字を集め公表するということは、本当に良い取り組みだと思います。消費者から見ると客観的に金融機関を比較する上での材料になりますし、また金融機関にとっては顧客の損益をプラスにするための取り組みをするインセンティブができます。これからもKPIの公表を続けてほしいと思います。
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