日本IBM社がNHKシステムの開発・移行中断に関して見解を公表

先日、NHKが営業システムの開発中断にあたり、日本IBM社を提訴した件についてニュースで報道されていました。

これを受けて、日本IBM社が見解を公表しました。まだ、訴状を受領していないため、請求内容に関するコメントは差し控える形になっていますが、開発中断にいたった経緯について見解を説明をしています。NHKの情報だけが報道されると日本IBMのブランドが棄損されてしまうので、このタイミングで説明をすることは必要なことだと思います。

今回のプロジェクトではNHKが指定した移行方針のもとで営業基幹システムを新しい基盤に移行するものであったとしています。現行システムは富士通?のホストコンピュータ、新しい基盤はIBMのアーキテクチャだったのではないかと思います。

そして、プロジェクトの開始後に現行システムの解析をして移行方針やスケジュール等を確定する契約だったとしています。NHKが当初に提示する調達仕様書だけでは現行システムの要件をすべて把握することは不可能なため、当然の進め方だと思います。

現行システムの解析の中で提案時に取得した要求仕様書では把握できない長年の利用で複雑に作り込まれた構造になっていることが判明します。これも、現行システムを新しいアーキテクチャに載せ替える開発の中ではよくある話しです。現行システムの解析の中で判った課題や開発コストが増えることや当初のスケジュールを見直すことを2024年の夏から2025年の1月までNHKには提案していたのだと思います。しかし、NHKは契約を解除することを選択しました。

もともと、現行のシステム開発業者がシステムの刷新自体も実施すれば、現行システムの難しさを分かっているので、それを踏まえたスケジュールやコストを提案するはずです。これに従って開発をしていればNHKはこの開発の成功確率を上げることができていたと思います。

しかし、政府調達制度の影響でNHKも入札せざるを得なかったのでしょう。現行システムのことを調達仕様書レベルでしか分からない新規の業者は現行システムをよく分かっている業者よりも安く開発できると理解し提案します。総合評価でより安かった日本IBMの方が得点が高くなり落札したのでしょう。このような流れだったとしたら政府調達制度自体に問題があると思います。

同じシステムを同じ業者がずっと長期間にわたって維持開発を続けると価格が高止まりするので入札で複数の業者を戦わせて価格を適正化するという考え方は分かるのですが、残念ながらITのシステム開発はそこまで洗練されていません。発注者が作成する調達仕様書で正確な見積もりができることはまずありません。発注者側はコンピューターに詳しいコンサル業者を雇って調達仕様書を作成する場合が多いですが、コンサル業者であっても正しく発注仕様書を作ることは難しいです。

同じ業者が続けると価格が高止まりするという問題点は入札にすれば解決するとは考えずに別の手段で価格を下げる必要があると思います。

今後、裁判の過程で詳細が明らかになると思いますが、このような、発注者にとっても受注者にとっても残念な出来事はこれで終わりにするような調達方式になることを願っています。

コメント