NHKが「営業システム」のソフトウェア開発を巡り、約30億円の特別損失を計上していることが報道されています。ネットで調べてみると、放送局の「営業放送システム」の説明が見つかりました。営業放送システムとは放送局の基幹業務システムともいえるもので、番組の送出設備と連携して番組編成やCM出稿などの登録情報をもとに放送運行を管理したり、広告主への料金請求情報を生成したりするものです。
日経xTECHに興味深い記事がありました。
テレビ電波がデジタル化する際に営業システムの特需が発生し、それまではNECや富士通、東芝などの牙城だったシステム構築にIBMが参画したことが記されています。日本IBMは1999年に専門部署を発足させて放送機器メーカーと協業しながら放送設備を含めたシステム構築事業に乗り出したとあります。
しかし、NHKは民間放送と異なりコマーシャルを流さないので、「営業放送システム」と「営業システム」は違うのかもしれないと思い、さらに情報を探してみました。すると、NHKの公式サイトに「営業システム」に関する説明がありました。「受信契約や受信料収納などの営業活動を支援する」とあります。つまり、民間放送とは異なる、NHK独自のシステムである可能性が高そうです。こちらに説明がありました。
今回、NHKが営業システムのソフトウェア開発を発注した相手先企業がこの日本IBMだと報道されています。NHKの2024年度の中間財務諸表で特別損失は33.4億円を計上、このうちシステムなどのソフトウェアの開発・製作に関わる減損は28.5億円とされています。
NHKは相手先にシステムの刷新のために営業システムのソフトウェア開発を発注したものの、大幅な納期の延長や、延期した納期でも確実に完了できる見通しが立たないという申し入れがあり、開発を中止し減損処理を実施したと主張しています。この時点ではNHKは取引先の社名は明らかにしていません。
その後、NHKは日本IBMに対して訴訟を提起したことが正式に発表されました。訴訟請求額は54億6992万7231円です。新システムの納期は、2027年3月、日本IBMと業務委託契約を実施したのが2022年12月、日本IBMから見直しの申し出があったのは2024年3月、2024年8月に契約解除を実施し日本IBMに対して支払った代金の返還を求めてきたとしています。
今回は「システムの刷新」で現行業者が日本IBM以外の会社であったとすると、日本IBMが刷新後のシステムを開発するのにあたり、現行システムの正確な仕様が必要だったと思いますが、それがどこまでNHKから提示できていたか、受託者がどこまで善管注意義務を果たすことができていたかなどが気になります。
ちなみに、令和 7 年 1 月 31 日付で現行の「営業システムのホストコンピューター等の利用および保守一式」の随意契約公示があったのですが、相手方は富士通株式会社となっていました。
従って、現行営業システムを開発・保守しているのは富士通なのかもしれません。富士通は汎用機の開発を中止することを発表しているので、NHKは今回の刷新の中でオープン化する意向だったのでしょうか。今後の報道も確認していきたいと思っています。
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