定例記者会見でNHKの会長が「日本IBMに責任があると考えている」と見解を説明

NHKの営業基幹システムが開発を中断したことに関して、2月12日に行われたNHKの定例記者会見で、稲葉会長から「これまでの経緯を考えますとNHK側に非はなく、日本IBM社側に責任があると考えております」という見解の説明がありました。また、IBM社が求めている協議の継続についても「難しい」としています。

すでに、NHKは日本IBM社に対し、システム開発にかかる業務委託契約の解除に伴う既払の代金の返還および損害賠償を求める民事訴訟を3日に東京地方裁判所に提起しているので、当然、システム開発に詳しい弁護士との相談を始めていると思います。しかし、クルマが双方とも動いているときは責任割合が0対100になることが少ないのと同じように、システム開発で双方とも協力しながら進めているときに、全責任が日本IBMにあるかのような発言をすることについて、弁護士がどのようにアドバイスしているのかが気になりました。今後の裁判の状況によっては、NHKの会長の認識が問われるようなことになることも心配です。

こちらのビジネスジャーナルの記事はSIerの有識者の意見を交えて解説されているので、とても判りやすいと思いました。

本当に長年にわたって稼働してきたコンピューターシステムについては、毎年のように機能追加を組み合わせて作られてきていることもあって、プログラムが段階的に拡張されて複雑な作りになっていることが多いです。例えていえば、増築を繰り返してきた田舎の温泉旅館のように、どこの廊下をどう歩いていけば温泉浴場に行けるのかよく判らないという構造にプログラムがなってしまっています。

このような状況になっていることを、予め調達の段階で調達仕様書に記載してベンダーに提示することは発注者側としては至難の業です。

古くて巨大なビルについては、そのビルを継ぎ接ぎしながら新たなビルにすることは無く、昔の建物は一旦壊して新しくビルを建てることになりますが、コンピューターシステムでは今までのプログラム資産を活かして新たなシステムを作ることとなり、このような開発中止のようなことが発生しがちになります。

今後、裁判の中ではNHKがどこまで発注者としての責任を果たしていたか、日本IBMが善管注意義務をどこまで果たしていたかが問われることになると思います。例えば、開発現場の進捗会議や上位層で実施されたステアリングコミッティの議事録などが紐解かれていくものと思います。この裁判の中で明らかになることは、今後のシステム開発を行っていく上での教訓にもなるので、公開される情報を追っていきたいと思っています。

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